底辺陰キャの俺がクラスの一軍女子と身体が入れ替わったので、最高に楽しくて充実した日常を手に入れるため人生をやり直すことにした

 人生終わった。とっくの昔に。むしろ最初から。そんな思いだけがずっとある。
 なにせ俺は顔が悪い。目は細いし離れている。鼻は無駄にでかいし、肌もぶつぶつしていて汚い。更に身長も低い。運動も嫌いだしテストの点数が良いわけでもない。ついでに名前も太田 おおた しんなんて、なんかパッとしない感じだ。
 そんな奴の人生に良いことなんかあるわけない。誰に認められることもない。どうせしょぼい大学に入って、つまらない仕事で糊口を凌ぐ程度が関の山だろう。結婚はおろか、彼女ができるかどうかすら怪しいものだ。
 俺なんてまるで数合わせのモブみたいなもの。未来は仄暗くて、楽しくもなんともない。なまじ地頭は良いもんだから、やるまえからそれがわかってしまう。こんなの単なる消化試合だ。
 もちろん俺だって腹立たしくはあるし歯がゆくもある。努力しろなんて言う奴もいるけど、持たざる者が猪口才 ちょこざいに行動したところで、生まれついての要素で敷かれたレールを変えられる訳がないだろう。人生なんて、みんなその線路に載せられて運ばれて行くだけのもの。運命とはそういうものさね。
 そこは割り切って弁えている。人間とは多かれ少なかれ差がある生き物だ。それで喚いたところで何か変わるわけでもない。上を見て嫉妬なんかしても疲れるだけ。
 それでも、恵まれている奴を見ると、心の うちでふつふつと込み上げるものもある。
 例えば高部 たかべだ。同じクラスのギャル風の女子で、顔立ちが整っていてスタイルも良い。ダンス部の部長を務めていて友達も多い。いつも楽しく笑っている所謂一軍女子。誰もあいつを放っておかないし、何時だって全てを与えて貰える。未来も明るい。楽勝だ。きっと人生に悩みなんかないだろう。
『は? 誰?』。
 心底ウザったそうな、ハエにでもまとわりつかれたみたいな高部の表情がフラッシュバックする。クラス委員の仕事をしていたつい先ほどのこと。「未提出者は進路希望調査票を中間テストまでに提出すること」という担任教師からの言伝を伝えるために話しかけた時の返事だ。
 流石にムカついた。こちらは一歩譲って、あいつとは住む世界が違うんだということをわきまえて、下人が貴族でも相手にするかのように へりくだった姿勢で声をかけてやっていたのに。むしろ口を開くこと自体が失礼と言わんばかりの横柄さ。こっちだってわざわざ会話したいなんて思ってもないのに。
 そもそもクラス委員だって、じゃんけんで負けたから仕方なしにやっているだけ。クラスの誰かが犠牲になって引き受けなきゃいけない仕事だった。それをやっている人間に対して普通あるはずの、相手を慮るとか労うとか、そういう感情すらも一切ない。
 向こうは俺のことを、同じ人間だとすら思っていないのかもしれない。
 とはいえ結局何ができるわけでもない。怒りを露わにしたところで、俺の味方をする人なんて誰もいないに決まっている。カーストが違うんだ。こんな事さっさと忘れて、精神の衛生を保つほうがよほど建設的だろう。
 だからもう早く家に帰って、気分転換でもしようと思った。未提出者全員に伝言も終わっている。とっとと下校しようと、足早に高校の昇降口を出て行く。
 だがそこで、再び高部実桜の姿を見かけてしまった。そのせいで、まだ新鮮なままの暗澹 あんたんとした感情も頭をもたげてくる。ついでに天気も悪い。雨こそ降っていないが空は暗く、先ほどから何度も雷が鳴っている。ナイーブな気分にもなるというもの。
 あいつは正門の門柱の所に一人で立ってスマホをいじっている。誰かを待ってでもいるのだろう。俺は目を伏せて、その存在を視界に入れないようそそくさと歩いた。
 そしてちょうどあいつとすれ違う瞬間、爆発した。
 実際には何が起きたのかはわからなかった。ただ視界がホワイトアウトして、身体のすべての感覚を失った。そうとしか表現しようがなかった。何もかも真っ白だ。
 やがて、真っ白だった視界が、いつの間にか真っ暗になっていることにふと気づく。身体の感覚も戻ってくる。重力の感覚からして、今自分は寝そべっているということだけはわかった。それでもなんだか痺れているような感じがして、未だに身体の輪郭は不鮮明だ。
 それから、周囲の叫び声にも似た喧騒が耳に届く。同時に焼け焦げたような不快な臭いが鼻腔へと。きっと何かただならぬことが起きた。その本能的な危機感が、早く状況を確認して身体を動かさなきゃいけないという強い動機になる。
 目を開いて最初に飛び込んできたのは、校庭の隅にあった大きな木が真っ黒に炭化して、そして今にも倒れそうになっている光景だった。木の下に生えていた雑草も炎に呑まれている。
 幸い俺のいる場所はその木から離れているし、倒れる向きも真逆だったから呆然とその様子を眺めていたままでも問題はなかった。
 周囲の生徒が、燃える校庭を指してなおも騒いでいる。「雷だ」と言う声が聞こえてきて、ようやく俺は何が起きたのかを察した。まさかこんな近距離に雷が落ちる経験をしようとは。ということは、俺は感電して気を失っていたということか。
 さてしかし、そうだとしたら俺は無事なのか。痛いとかは特にないが、感電したのだとしたら果たして身体は大丈夫なのだろうか。
「……っ」
 不安に駆られたまま自分の身体を確認して、絶句した。怪我をしていたわけではない。傷も汚れも特にない。綺麗なものだ。むしろ綺麗過ぎる。俺は何故か女子のブレザーを着て、スカートを履いていた。
 来ている服が変わったというだけのことではない。スカートから伸びる脚は、細いしすべすべしている。俺のすね毛だらけでモジャモジャと見苦しい脚とは似ても似つかない。
 更に俺の胸部には、ワイシャツを生地の下から押し上げる膨らみがある。その山に触ってみれば、触られたという感触もちゃんとある。それは紛れもなく、自分の身体の胸の肉が出っ張っているということに他ならない。
 咄嗟にスカートの上から股を触った。そこには当然あるはずのチンコの感触がなかった。のっぺりとしていて何もない。それがあまりにも信じられなくて、スカートを捲りあげて直接目で見て確認してしまう。
 そこにあったのはなだらかな股間と、そこにぴったりと張り付く薄ピンク色のレースの付いた可愛らしいパンティだけだ。何処からどう見ても女物。履き潰してよれよれのトランクスでもなければ、見慣れた竿も鎮座していない。
「嘘だろ……」
 そう呟いた声も、元の自分とはまったく似ていない高い声だ。あらゆる状況が、俺の身体が女性のものになっているという事実を指し示している。
 その時になってようやく、目の前にもう一人倒れていることに気が付いた。男子生徒だ。というか俺だ。顔はよく見えなかったが、直感的に確信する。
 しかし、俺の目の前に俺がいるというありえない現象。そもそも自分の姿なんて客観的にまじまじ見たこともないし、実はよく似た他人なんじゃなかろうか。そう思ってよくよく覗き込んでみるが、やっぱりそいつは俺にしか見えない。
 俺がここに倒れているのだとしたら、つまり位置関係的に俺の精神が今入って動かしているこの女子の身体はつまり。頭の中でパズルのピースが組み上がっていく。そして答えにたどり着こうとした瞬間、俺が目を覚ました。
「え……、なんであたしが?」
 俺と目が合うと、目の前の俺はそう呟いた。つまり、どうやら俺の推測は正しいらしい。俺こと太田真矢とあいつこと高部実桜は、身体が入れ替わってしまったのだ。雷が落ちたせいだろうか。そんな馬鹿なと思っても、事実を羅列すればそうとしか考えられない。
 でもどうすればいい? 考えなきゃいけないことはきっと色々ある。でもまずは、女の身体を自分の意思で好きに動かすことが出えきるということが一番の関心事にならざるを得ない。
 俺だって人並みに思春期の男子だ。女の身体に対しては、どうしようもない劣情を抱えながら生きている。本来ならどんなに焦がれようと触れることは許されないはずのそれが、今はまとめて全部手に入ってしまったのだから気が気じゃない。
 すっと立ち上がってみると、なんか身体のバランスが変でふらふらする。それでも掌を握ったり開いたりしてみれば、ちゃんと俺の意思に従って動く。異性のものであるという構造の違いに戸惑いはあるものの、自分のものとしてきちんとこの身体を動かせるようだ。
 スカートが短いせいでか、下半身はまるで何も履いてないみたいな感覚だ。なんだか野外露出しているみたいで気恥ずかしくなてくる。でも視線を下に向ければ、そこにあるのは艶めかしいJKの脚線美。
 つまり何も間違っていない。今の俺は、冴えないブサイク男なんかじゃなく、バンバン脚も出していく自信に満ちた華の女子高生なのだ。
「すっげえ」
 思わず感嘆の声を上げてしまう。突然他人の、しかも異性の身体になるだなんてとんでもない状況なのだからもっと戸惑うべきではと、冷静な自分が頭の片隅から問いかけてくる。でも、感動のほうが大きいのだから仕方がない。
 だってこっちの方がいい。誰だって人間未満扱いされるカースト底辺野郎なんかより、顔が良くてみんなからちやほやされている人気者の身体の方を選ぶに決まっている。
 ましてやこいつはクラスでもトップクラスの美少女だ。憎々しく思いながらも、どうしようもなく目を引かれていたこの麗しい肢体が、おっぱいだろうとお尻だろうといつでも見放題だし触り放題。全部俺の思うがまま。だって自分の身体なのだから、自分がそれをどうしようと誰もそれを咎めることはできない。
 これまでなんて、ちらっと姿を視界に入れただけでも、犯罪者を見るみたいに冷ややかな視線を投げつけられていた。まるで痴漢されましたとでも言いたげに、胸元やスカートの裾を直したりされていたのに。その前提が全部ひっくり返った。
「今なら俺が何でもできるんだよなあ」
 誘うかのようにワイシャツの胸元を広げて、スカートをたくし上げてみる。キャミソールの胸元のレースが周囲に晒される。白く眩しい太ももが惜しげもなく露わとなる。その動きは誰にも遮られない。本当に女の身体が俺の思い通りに動いている。興奮で頭に血が上りすぎてくらくらしてきた。
 季節外れのクリスマスにずっと欲しかったプレゼントをもらったみたいな気分だ。今までのチンケなおもちゃなんて、もうどうでも良い。太田真矢の人生を捨てて、高部実桜の人生に乗り換えられるなら俺はそっちを選ぶ。
 ひょっとしたら、しばらくしたら元に戻ってしまうのかもしれない。それはわからないが、出来ることなら俺はずっとこのまま入れ替わっていたい。この身体さえあれば、俺だって何もかも手に入る勝ち組人生が送れる。高部実桜の全てを乗っ取って、約束されたこいつの最高にハッピーな人生を俺が謳歌したい。
 これまでの俺の人生は、クソみたいな場所へ向かう線路を否応なくガタガタと走る列車のようで、こいつのようにキラキラした場所へと向かう線路を悠々と走る列車をただ羨ましそうに見ているしか出来ない惨めなものだった。
 それがどうして、その楽勝人生の列車に飛び乗れた。全力でしがみつく。だってこいつらみたいな、生まれ持ったものに恵まれた奴等ばかり良い目を見るのはズルいじゃないか。俺だって楽に幸せになりたい。
「え、何? 何? どうなってんのこれ?」
 対して、俺の身体になったあいつは未だに状況がつかめていないようで、ずっと狼狽えている。自分の置かれている状況が理解できないというのは不憫ではある。可哀そうだから、胸ポケットからあいつの手鏡を取り出して、それを見せてやる。
「なにこれ……。誰……」
 するとみるみる、あいつの入った俺の表情が曇っていく。おおよそ何が起こったのか察していそうな雰囲気はあるが、はっきりと教えてやろう。
「どうやら俺達、身体が入れ替わっちゃったみたいだよ」
「ッ……! 元に戻せよ! ふざけんな!」
「そんなこと言われても、俺だってどうしてこんなことになったのか、さっぱりわからないんだ。困ったなあ」
 血相を変えて掴みかかってくる元高部実桜に対して、俺はどこまでも他人事のような態度になる。自分でも驚くほど軽薄な声音だった。
「いい加減にしろよお前!! ふざけたこと言ってんじゃ」
「ていうか、やめてよ。キモいんだけど」
「はあ!?」
「あんたみたいなチビ童貞野郎が、私の身体に触って良いと思ってんの? 痴漢だよね。まじでキモい」
 言ってやった、言ってやった。いつもこいつが俺に対して思うであろうことを、言い返してやった。わなわなと震えながら絶句してやがる。まったくもって胸がすく思いだ。 
「違う! それはあたしの身体! お前のじゃねえよ!」
「そんなわけ無いじゃん。どっからどう見ても、今は私が高部実桜。あんたじゃない。もう一回鏡見せてやろうか?」
 声を出すほど、この身体を俺が操っているんだという実感が深まる。それが気分が良いせいで、普段の俺ではありえないほど饒舌にもなる。ついつい煽りにも興が乗る。
「実桜はあたし!!」
 耳障りな声で喚く。不愉快だったので、俺はスカートを捲り上げてパンツを見せつけてやる。見やすいようにガニ股になって腰も落とす。余った手でおっぱいを下から持ち上げて、嫌らしい手つきで撫でまわす。
 どちらも高部実桜が絶対に太田真矢の前でするはずのない行動だ。だが、現実として高部実桜の肉体はその行動を忠実に実行している。
「あれあれ、この身体は俺が思う通りに動いてるみたいだけど? あんたが高部実桜だって言うなら、やめさせてみたら? できないってことは、あんたはもう高部実桜とは関係ないただのキモ男だってこと」
「あたしの身体で変なことすんな!!」
「はーい高部実桜、脱ぎまーす」
 再び掴みかかってきたあいつの手をいなして、更に嘲笑う。ブラウスのボタンを外していく俺の手を、なんとか止めようと何度もまとわりついてくる。もみくちゃになりながら、いい加減鬱陶しくなって思いっきり払いのけた。そうすると、思いのほか簡単にあいつは地面に転がった。
 そしてそのまま、起き上がってこない。想像以上に筋力がなくてびっくりするな俺の身体。まさか女に力で負けるとは。いや、流石にあいつの精神が憔悴しきっている影響が大きいか。
 あいつは地面を舐めながら、死んだような顔でコロス、コロスと呪詛を吐いている。涙や涎で顔面はぐちゃぐちゃ。ただでさえ汚いのに、更に見るに堪えないことになっている。
 その姿が、どうも癇に障る。コロスって。太田真矢のくせに、高部実桜に対して一矢報いるとかそんなふうな生意気な発想を持っているのか。カーストの違いというものをまだ理解していないようだ。
 せっかくだ、手っ取り早くわからせてやろう。俺はスカートの中に手を突っ込んでパンツをずり下ろして、そのまま脱ぎ捨てた。更に倒れているあいつのズボンもずり下げる。
 チンコはちゃんと勃起していた。内心実はこの状況に興奮していますなんて雰囲気でもないから、生理的な無意識の反応なのだろう。女の身体を見たら、それが到底自分と釣り合わない、手に入らないものだとしてもいきり立ってしまう。情けないものだ。中身がどうであろうと、俺の身体である以上反応は変わらないらしい。
「やめろッ……」
 あいつが絞り出した抵抗の意思はさくっと無視して、俺は握ったペニスを自分の股間にあてがった。そうやってぐりぐりと擦り付けると、なんだかいやらしい気分になってくる。こんなのもうセックスだろ。
「誰か!」
 だが興を削がれる。あいつは周りに助けを求め始めた。近くに他の人はいない。まだみんな校庭の火事で混乱していて、俺たちがこんなところで組み合っていることには気付いてないようだ。
「おいおい。いいのか、そんなことして。捕まるのはお前だぞ」
「はあ? そんな訳ないだろ! 無理矢理してるのはそっちなんだから」
「別に? もし誰か来たなら、俺はすぐに被害者ムーブするぞ。お前に襲われましたって。そうしたらどうなる? 皆が高部実桜の味方をするさ。つまり俺の方だ。太田の言うことなんか誰が聞くかよ。正義感あふれる男子に、お前ボコボコにされるかもな」
「そんな、わけ……」
 言葉が途切れたのは、あいつ自身も同意見であることの証左だ。しかし悲しくもなる。俺と高部実桜では人間の価値が違うということは、両者認める事実であるということが確定したのだから。
 もし、もっと肯定的な反応だったならどうだっただろう。そんな訳ない、皆ちゃんと話を聞いてくれると言い切ってくれたら。俺たちは同じ人間で対等だと、ただ俺が一人で卑屈になっていただけだと諭してくれたら。
 一瞬そんな考えが頭を過ったが、もう意味のない感傷だ。結局人間は勝者と敗者に分かれる。勝者はすべてを手に入れ、敗者はすべて奪われる。それが真理。そして今は、俺が勝者であいつが敗者だ。そのルールに準じる。
 本当はマンコに押し当てるだけで終わらせるつもりだったが、挿入もする。その実、勃起したチンコにマンコを嬲られ、股間だけじゃなく全身が温くこそばゆい快感に満たされていて、中にれて欲しいという感情が無視できなくなりつつあった。
「女って、こうなんだな。こんな感じなんだ。男とはやっぱ違うや。やっぱチンコ挿れられたいとか思うんだ。変態じゃん」
「もう、やめっ……、やめ、おねが……」
 か細い声であいつが何か言っているが、知ったことではない。過呼吸を起こしたようで酷く苦しそうではあるが、まともに抵抗することも出来ない様子なのは好都合だ。
 挿入を試みる。だがうまく入らない。そもそも穴って何処だ。そのあたりの勘所が全然ないせいで、正しい所を突いているのかすらよくわからない。処女膜ってやつか? いや、彼氏らしき奴と一緒にいるのを見かけたことがあるし、こんな派手な女がまだ処女ってこともないと思うが。
「おっ」
 チンコを握ってない方の手でマンコを弄って膣口を探していると、特にわかりやすい快感が発生する場所があることに気が付いた。亀頭を触った時のように、ピリっとした気持ち良さが身体を貫く。
 さっきまでのじんわりと蕩けていくような感覚も良かったが、その膨らみを刺激すればどんどんと性感が高まっていく。急速に身体が熱を帯びていき、男根を迎え入れる体勢になっていっているのを感じる。
 気が付けばマンコは湿り気を帯びていた。そして、ヌルッと勃起したチンコが俺の身体の中へと埋まっていく。
「あっ、はああんっ」
 無意識に俺はそんな嬌声を上げていた。この身体が備えていた本能の発露だ。抗いようもない。頭とお腹がぐっと温かくなって、身体中に快感が満ちていく。脳ミソまで溶けてしまいそうだ。
「ああっ、良い。これ。良いぞっ」
 更にチンコを咥えこむ。全部が俺の身体のナカに納まると、一層深い快感に沈められる。男の時とは全然違う。性器だけじゃなく、全身が気持ち良い。それがずっと続く。
 男より女の身体の方がずっとセックスの快感は強い。それなのになお、この身体は男根を貪るように身体を捩らせて貪欲に快楽を搾り取ろうとする。
 俺はただ、そんな女体の生来的な性質に翻弄され、動くがままに身を任せているしかなかった。何か考えている余裕もない。自らの身体に進入してきた棒に、もっと、もっとと快楽の下賜を懇願することしかできない。
 やがてこの身体は快感の臨界を迎える。キャパを超えたと思った瞬間があった。そうすると、身体中に満ちていた性感が一度に暴れ出したかのように、制御を失って全身を走り回る。
「うっ、ぐっ、っ……! はっ、あっ!」
 成す術はない。俺はただ身体を強張らせ、快感に蹂躙されることに耐えるしかなかった。きゅっと全身に力が入り、やがて弛緩する。壊れてしまいそうなほど満ちていた快感も、潮が引くように落ち着いていく。後には荒れた呼吸と微温い高揚感が残った。
「え、あっ、ウソ……、ヤダッ」
 心地よい余韻に浸っていると、唐突にあいつが慌て始めた。そしてブルブルと身体を震わせる。おもむろに肉棒を引っこ抜いてみると、俺の股からドロっとした白い物体が零れ落ちるのが見えた。
「うげっ、お前射精 したのかよ。汚ねえな。妊娠したらどうすんだよ馬鹿野郎」
 まさか射精するとは思っていなかったから、流石にテンパる。あいつにとっては屈辱的で、絶対に受け入れられないことだろうに。慣れない男の身体に振り回されているということだろうか。
 とはいえ、この後始末をどうしたものか。どんどん垂れてくるし、そのまま無視しておくわけにもいかない。とりあえずポケットに入っていたピンクの可愛らしいタオルハンカチでこぼれ落ちて来る分を拭い取った。それをまた持ち歩くのも嫌だったので、そのままあいつの眼前に投げ捨てておく。
「なっ、んで、あたっ、しがっ、こん、な、奴にっ」
 あいつはといえば、倒れこんだまま子供みたいにしゃくりあげている。まだ現実を受け入れられていない感じはするが、まあどうせ時間の経過と共に否が応でも順応するだろう。
 お前はこれから、キモ男として虐げられ続ける人生をこの先ずっとずっと生きていくんだよ。
 対する俺は美少女として、頭空っぽでも最高に楽しくて充実した日常を過ごせる楽勝人生を、お前の代わりに送らせて貰えるわけだ。これまでの日陰者の鬱憤を晴らして、人生を取り返させてもらおうじゃないか。
 まったく、清々しい気分だ。気付けば曇天の隙間から日差しが差し込んでいる。さっきまでの荒れ模様はいったい何だったのか思うほど、希望に満ちた晴れの予感が満ちていた。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   





『人体の神秘 入れ替わり現象の実在を確認』
 新聞にこんな見出しが踊る。英国の調査チームによると、ある少数民族の間で伝承されていた人間同士の精神の交換儀式について、実際にその民族の二人組の精神が入れ替わる現象が発生したことを確認したそうだ。
 具体的なメカニズムについては不明だが、人間の自意識に関する研究について大きな一石が投じられたことになるらしい。その原理には雷が影響している可能性があるという。
 俺と高部実桜の身体が入れ替わった、その次の日に出たニュースだ。とんでもない偶然か、それともあの日は世界的に入れ替わりに必要な何らかの条件が満たされていたとでも言うのか。それはわからないが、これまで創作の中の出来事でしかなかった現象が実在すると判明し、世界中に衝撃が走った。
 現段階では仕組みはわからないとはいえ、研究されているということは俺たちも大っぴらに助けを求めることができるということだ。たいした意味はないかもしれないが、他人から支援が得られるということは救いになるんじゃないだろうか。
 それに法則が解明される可能性がある。長い年月がかかって、結局役には立たないかもしれないが、元に戻る方法が発見されるかもしれない。俺にその気はないが、あいつにとっては希望となるはずだ。
 
 でもあいつは、その日のうちに死んだ。
 
 よっぽど俺の身体でいることが絶望的だったみたいだ。俺がセックスの余韻に浸っている間に、校舎の三階へ登ってそのまま頭から飛び降りた。あいつには俺の身体で生きる意味なんて、ただの一つも見出せなかったのだろう。一日、いやきっと一分一秒すら我慢ならなかった。終わっている人生を潔くさっさと終わらせたのだ。
 そのせいで本当に大変な目にあった。あいつは飛び降りる前に、周りの人間や友人たちに、俺に身体を奪われたと泣き喚きながら訴えて回っていた。
 もちろん身体は、何を考えているかわからない扱いをされる陰キャの太田真矢のものだから、そんな意味不明な発言なんか誰も取り合わない。気が触れたとでも思われたことだろう。
 だがそのまま自殺するという、いくらなんでもショッキングな出来事が起こった後にこのニュースだ。皆が、あいつが言っていたことは実は本当で、太田真矢と高部実桜は入れ替わっているのではないかという認識に至ってしまった。
 俺だって焦った。まさか死ぬだなんて、頭の片隅にすらなかった。これから俺はどう振る舞うべきかなんて、ちっともわからない。
 当初は、どうせ身体が入れ替わるなんてファンタジーを誰も信じるはずがないし、正真正銘本物の高部実桜の身体を持っているのが俺である以上、あいつの人生を乗っ取ってやることも可能だと息巻いていた。
 だが、入れ替わったのかもしれないと周りの人間に疑われた状態で、シラを切り通す自信はなかった。その日はカラオケボックスで夜を凌いだものの、俺はあいつの家の場所さえ知らないのだ。そんな状態でこれからうまく取り繕えるほどの悪知恵もない。
 だから入れ替わったことを、すぐに認める羽目になった。その瞬間に俺を見る周囲の目がざっと変わったのが忘れられない。不快な紛い物を見るかのようで、俺が楽しみにしていたハッピーライフなんてそこにはなかった。
 そうしていると、あれよあれよと話が伝わっていき、テレビだの新聞だのユーチューバーだのがインタビューしに来るし、行政だの大学だの研究機関だのからも調査の名目で色々なことを聞かれたり検査されたりした。例の英国の調査チームとやらまではるばる来日する始末だ。
 役所の人によれば、結局俺が太田真矢なのか高部実桜なのかは正式には決まっていないらしい。前例のないことで、法務省だか総務省だかが揉めていて結論が出ないとか言っていたような気がする。一応、周りからの扱いを踏まえて、太田真矢として行政手続きはできるように暫定的に取り計らいますねとだけ宣言された。
 そんな激動の期間が一月半ほど続いて、もう6月も末だ。最近になってようやく俺は日常を取り戻すことを許された。もっとも、他人の身体になるなんて状況では、一体何処が帰るべき日常なのかもわからないが。
 とにかく学生である以上は学校にでも行くしかない。制服は元々の自分の男子用を着ている。ぶかぶかでベルトで無理やり縛っているような状態でみっともないが、入れ替わりを認めてしまった以上、実桜に成りすまして登校することなんて周りの人間が許すはずもない。男だと認識されている状態で女子の制服を着る勇気もなかった。
 それ以前に、男なのに女の身体をしているという、その時点でまるで女装でもしているかのような気後れみたいな感情もある。とにかく外を出歩くには、どんな格好をしていても恥ずかしかった。中身か身体か、どちらかには不釣り合いになってしまう。せめて慣れた服が良かったし、少しでも外界との間に壁が欲しくて、初日はジャケットを着たままでいたほどだ。
 だが既に真夏と遜色ない気温。身の危険を感じるレベルでしんどい。流石に根負けして、今日は夏服のワイシャツだけにした。
 もっとも、俺のことなんて誰も見ていないのかもしれない。あの日から俺は同級生の間では完全に腫れ物扱いで、誰も話かけてくることはない。ただ遠巻きに様子を伺われているだけ。俺の方だって、どんな顔して付き合えば良いのかわからない。
 休憩時間の今も、俺の周りは不自然な無人の層が囲んでいる。転校生にでもなった気分だ。ただ自分の席に座って、ぼーっとしながら時間が流れるのを待つ以外にすることもない。
「太田氏、えっと、元気?」
 そう思っていたら、話しかけてくる男子がいた。三谷という。俺の友達と呼べる数少ない相手だ。入れ替わる前までは、休憩時間はだいたいこいつと駄弁っていた。
「あの、ドスダム見てる?」
 三谷が切り出す。どこか余所余所しいが、話題は今やっているロボットアニメのこと。一月半ぶりにする会話がそれかよと思わないでもない。だが、以前と同じように接してくれることがありがたくもある。
「あ、ああ、見てるよ。結構面白いよね」
 俺の返事もたどたどしくなってしまう。久しぶりの友人との会話だ。そうもなるさ。それに嬉しさもある。こんな状況になっても歩み寄ってくれたことに、クサイかななんて思っても、変わらぬ友情というやつを感じないではいられない。
「だよね。昨日の回、戦闘シーンマジでヤバくなかった?」
「思った。映画かよってくらい動いてた。しかも、え、お前死ぬの!? ってなった。どうなるんだろうな、これから」
 それから、抜け落ちた時間を埋め戻すようにアニメ談義に花を咲かせた。何時以来だろうか、人生に潤いを感じたような気がした。
 でもすぐに違和感にブチ当たる。三谷と目が合わない。三谷の視線はほとんど下の方を向いていて、たまにチラチラと俺の顔を見るような目の動かし方をする。それも、俺の顔色を探っているかのような視線だ。
 言いしれない居心地の悪さを感じる。でも気付かないフリをした。取り繕うように笑顔を作りながら、努めて他愛のない話を続けようとした。まるで、休憩時間の終わりまで時間を稼いでいるみたいだ。
 そうしていたら、すっと三谷が顔を近づけてきた。ひそひそ話をする距離感。目は笑っていない。真顔だ。反射的に身を引いてしまう。
「っていうか、オッパイ触って良い?」
 思わず俺は席を立っていた。まもなく次の授業が始まるが、そんなこと気にする余裕はなかった。とにかくこの場にいたくない。ふらふらと逃げるように誰もいない廊下を歩いて、やがて突き当りへと辿り着く。
 壁に身体を打ち付けながら、言葉にならない声を漏らす。ただ身悶える。心に生じたわだかまりを、そうやってやり過ごそうとするしかなかった。現状を言語化することを、脳が拒否している。だがどんなに目を逸らそうとしても、いずれは向き合わないではいられない。
 気持ち悪かった。ただただ気持ち悪かったんだ。生理的に無理だった。三谷のことが。どんなに取り繕おうとしても、その感情が生じたことは紛れもない事実だ。
 でもその感情を、俺は認めたくない、受け入れたくない。だって俺も男として、三谷のことが理解できるから。そりゃ、こんなレベルの美少女と面と向かって会話したら、色んな所が気になるに決まっている。
 まして、今更気が付いたが、シャツが少し透けてブラの水色が薄っすら見えてしまっている。そんな隙だらけな女子、まともな男子ならガン見しちゃうに決まっているじゃないか。
 更にその身体には、気心が知れた男友達の精神が入っているのだ。共有してくれるかも、触らせて貰えるかもと思ったっておかしくない。逆の立場なら俺も同じことをすると思う。
 むしろ、こんなふうに急に逃げ出した側の方が失礼ですらある。もし気分を害したとしたなら、その場で俺がそれはダメだと言えば良いだけだ。友達同士で、男同士なのだから。それで済む程度の話のはずだった。
 そこまでわかっているのに、どうやっても受け入れることができなかった。不快感が喉元を通り過ぎない。嫌悪感を遠ざけたいという欲求で、頭がいっぱいになってしまった。
 それもそれで訳が分からなくて、ただすねたように不機嫌を態度に出して撒き散らすしかできないでいる。経験したことのない心の動きだ。どうして俺はこんなことをしているのだろうか。ちょっとセクハラ紛いのことをされたぐらいのことで。
 結局、そのもやもやに折り合いをつけられず、俺はそのまま早退した。俺の家に辿り着いた頃には大分気分も落ち着いた。喉元は過ぎてないが、熱さに慣れたとでも言うのが適当かもしれない。
「ガシャン。ブイン、ドドドド」
 俺は自分の部屋で、ロボットのプラモデルを戦わせて遊んでいる。自分でも幼稚とは思いつつも、昔からこれが一番楽しいんだから仕方がない。人前では言えないが、一番の趣味だ。
 これに没頭いている間は、嫌なことがあっても忘れられる。着替えるのも途中で面倒になって、制服だけ脱ぎ捨てた下着姿のまま棚からプラモを取り出し始める。今は特に興が乗っている。いつもより多くの機体を机に並べた。これは一大戦闘になるな。
『お願いです、娘を返してください』
 そのまま遊んでいたら、日が暮れる頃になって階下からそんな声が聞えてきた。玄関の方から、中年くらいの女性の声だ。続けて、俺の母親の声も聞こえる。
『ですからあれはうちの息子です。いい加減にしてください。実際に今日だって、まっすぐうちに帰ってきて、まっすぐ自分の部屋に入って行ったんです。あなた方の娘さんじゃありません』
『いい加減にするのはそっちでしょう! 人間の中身が入れ替わるなんて、そんな馬鹿なことが起こるはずがないんだから』
「これ以上お前らの好きにさせてたまるか!!」
 迫りくる宇宙軍の軍勢に単騎で突っ込む機体あり。飛行形態から戦闘形態へ変形。フルバーストモード。やっぱりこの変形機構はかっこいい。アニメでは扱いが微妙だったけど、俺的にはこのロボが一番好きだ
 おっとしかし、胸がつっかえたせいで立たせていた敵役のメカが倒れてしまった。せっかく良い所だったのに、水を差された気分だ。
『おたくが信じないのは勝手ですけどね、科学的に入れ替わったことが証明されてるんですから、現実を見られた方が良いと思いますよ』
「くっ! させるか! ドゥヒンドゥヒン」
 敵の攻撃を被弾するが、ビームを撃ち返す。劇中の話であれば、被弾半壊したりパイロットが怪我してたりと苦しい戦いばかりしていた機体だけど、そこからずっと粘っていぶし銀の活躍をするのが格好いいんだ。終始万全で戦った描写が殆ど無いから、フルスペックでの活躍が見たかったという人の意見もわかるけどね。
 でも効果音の声真似が下手になったな。声帯が変わったせいで。前まではもっとそれっぽくできてたのに。そのせいでか、なんか盛り上がらない。前まで程のめり込めなくなってしまっている。
『それはそっちのことでしょう! おたくの息子こそもう死んでるんだから』
 やめろやめろと、男性の窘めるような声が聞こえる。それに呼応してうちの母親も含めてヒートアップしていって、もう罵り合いなのか何なのかもよくわからないような大声の出し合いへと変わっていった。
 気がつけばプラモを持つ俺の手は止まっていた。なんか、萎えた。
「オナるか」
 誰へということもなく宣言して、ブラのホックを外す。ちょこんとした乳首を爪先でカリカリとイジメてあげると、キュンキュンした感じがお腹の方で疼き始める。女はおっぱいでも感じられて得だな。
「あっ、あんっ」
 艶っぽい声を上げるのもすっかり板に付いてきた。気持ち良い。気持ち良いのは間違いないが、何処か空虚な感じがして、心に孔が空いたみたいにも思う。
 そもそも、おっぱいを見てもあまり興奮しなくなった。自分の身体になってしまって、毎日見ているせいだろうと始めは思った。だから男時代に鉄板だった巨乳アイドルのグラビアをオカズにしてみたが、それでも反応はいまいち。根本的に、女に対してエロい目で見るという気がしなくなったように感じる。
 自慰はブンドドと並んで、入れ替わってからも残っている俺の楽しみだ。何もやる気がしなくてもこの二つだけはする気になれる。そのはずだったのに、最近どうしても乗り切れない。虚無の思考のまま乳首を捏ねてクリを擦ってみても、なかなか濡れもしない。
 その時ふっと頭を過ったのは、あの時の俺の勃起したチンコだ。それを思い浮かべた瞬間、萎みつつあった性感が再び高まり始めたのを感じた。大きく息をつく。これは呆れか諦めか。
 いよいよ、認める以外ないのかもしれない。目を逸らしながら一月半をやり過ごしてきたけれど、もう逃げきれない所まで来ているのだろう。
 きっと俺の精神は女になりつつある。女の身体に入っているせいで、ホルモンか何かの影響でも受けたのか、とにかく精神が変容していることはもう間違いない。
 俺がこれまで通りの俺でいることを、肉体が許してくれない。精神が求めることと身体が求めることがズレているから、戸惑いが生じるし何をやっても虚しくなるんだ。じゃあどうすればいい?
 なんでこんなことになったのだろう。俺はこれからどうすればいいのだろう。そんな漠然とした不安の塊が、俺の首に手を回して肩に寄りかかっている。日に日に存在感を増しているような気さえする。
 道標が欲しい。たとえ正解なんか出なくたって、一緒に共感して寄り添って考えてくれる存在を、どうしようもなく求めてしまっている。
 同じ境遇の人が、何処かにいるんじゃないかと探したことがある。だが、見つからない。調査に来た研究者の人たちにも聞いたけど、誰もがこんな例は他にないと言う。例の英国のチームですら、俺達と研究中の部族以外の現存するケースは知らないそうだ。
 だからといってその部族の人たちに会いに行くのは無理がある。それに文化が違い過ぎて、きっと俺の気持ちを理解しても貰えないだろう。
「なんでっ!」
 思わず口を突いて出た。なんであいつはいないんだ。こんな身体だけ残して消えてしまったんだ。あいつがいれば、俺一人でこんなに悩むことはなかったかもしれないのに。
 突発的に苛立ちが爆発し、幼い子どものように足で床を蹴った。響いた音は思っていたより弱々しい。癇癪に任せたまま、ぐしゃぐしゃと髪を掻き毟る。長い髪の毛が煩わしくて堪らない。
 俺のせいか? 入れ替わったのが俺だったのが悪かったとでも。それとも俺が勝手なことをしたせいか? 煽ったりしたのがいけなかったと、それがあいつの生命を奪ったと?
 俺があいつを殺した。でも、あいつが俺を殺した。
 そう追求されるなら、そう言って反撃しないではいられない。他人の身体で勝手なことをしたのは、あいつだって同じじゃないか。そのせいで俺は一生一人で他人の身体のまま生きていくことが確定した。俺だって精神的苦痛は受けているんだ。ましてや、俺の被害の方は二度と取り返しがつかない。あいつだけ被害者面するのはおかしいじゃないか。
 今は周りに入れ替わったことが知られてしまっているから忌避されているけど、大学に進学して俺たちのことを誰も知らない全く違う街に行けばやり直せる。また最初みたいに、ギャルでパリピな高部実桜のパーソナリティを利用して楽しく過ごせる。もう少しだけの辛抱だ。
 俺がそんなふうに考えられる人間だったら、もっと簡単だっただろう。
 でももう無理だ。陽キャの人生を乗っ取ってお気楽に生きようなんて発想は、人生を交換しているからできたものだ。人生が平等で等価なものであるという建前があるおかげで、別に自分だけ得をしているわけではないという言い訳が成り立っていた。それじゃあお互い元気でやりましょうよと言えたんだ。
 でもあいつが人生を手放したせいで、俺が一方的にあいつの人生を奪い取ったのと同じことになってしまった。俺だって勝手に終らされたんだなんて主張したって詮無いこと。俺だけが生き残ってしまった状況で、あいつのことはもう知りませんなんて、俺には言えそうにない。
 俺の首を絞めている重さの正体は、あいつの怨念か何かなのかもしれない。このままのうのうと生きるなんて許さないと。お前も絶望しろと言っているのだろうか。
 でも、俺に纏わりついているのなら教えて欲しい。じゃあ俺はどうすれば良い? 俺は何になれば良い? この虚無感や罪悪感から解放してくれよ。こんなチグハグで不確かな存在のままでいて、ずっとまともな精神状態でいられる自信はない。
 男だった時は、どう足掻いたところで連れて行かれる未来は面白くもないだろうという諦念があった。生まれついてそういう線路に乗せられているのだと思っていたし、そういう構造が憎かった。もっと良い線路が羨ましかった。
 でも今はまるで脱線だ。未来がちっとも見通せない。倒れた車体が車輪を空転させているかのような、この場でこのまま腐っていきそうな閉塞感に苛まれている。俺はこれからどうしたら良いのか、それに答えてくれる者は誰もいない。
 俺の線路は何処にあるのだろう。一体俺は誰なのか。俺の名は何か。こんな事なら、入れ替わる前の方がマシだった。戻りたい、線路の上に。



 次の日。教室ですれ違いさまに「おはよ」と軽快に会釈すると、その男子は俺の姿を二度見した。他の女子たちは、ぎょっとした顔で俺のことを見ている。そんなリアクションにいたたまれなくなってしまって、俺はそそくさと自分の席に着いた。
 俺は今、女子のブレザーを着ている。だが周囲の奇異な視線に晒されて、早速心が挫けそうだ。ただでさえ女物の服には慣れていなくて、こまで歩いて来ただけでも気後れで疲れ果てているのに。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。でも、決めたことはやり抜きたい。
 俺は、高部実桜になることにした。
 これまでのように、太田真矢としての意識のままあいつの身体を操るということではない。逆の発想で、身体に合わせて俺の自意識を高部実桜に同化させる。彼女を完璧にトレースし、身も心も名実共に高部実桜となる。
 そうすればこの中途半端から解放されると思った。太田真矢のままでいられない以上、自分を消して高部実桜の方に精神を寄せる。そうすれば違和感は払しょくできるはずだし、あいつが乗っていた人生のレールに乗ることになるはずだ。あいつの人生を忠実に引き継いでやることは、きっとあいつへの慰霊にもなるだろう。
 だがそのためには、皆に完全に俺のことを高部実桜だと認めて貰わなければならない。それには高いレベルの献身が必要だ。この程度でへこたれてはいられない。
 自分勝手だし、困難なことをしようとしていることは自覚しているけど、どうせ他に俺の置かれている状況を打開する良いアイデアもない。
 まるで彼女であるかのように、明るい表情を作っては振りまいてみる。男子はざわついているが、女子には無視された。当然だろう。いくら見た目が高部実桜でも、中身はあのキモい太田真矢なのだから。
 それから、結局誰にも触れられないまま一日を過ごすことになった。三谷を含めた他の男子たちも、完全に女子の装いとなった俺に対する態度を測りかねていたようだ。
 何事もなかったのは、今日のところはそれはそれで良かったのだが、困ったのはトイレだ。
 女子トイレに入るべきではないと思った。昨日までは男子トイレに入っていたが、今となってはそれもすべきではないと思う。念ため登校前に近くの公衆トイレの多目的トイレで済ませてきたものの、一日中我慢することはできなかった。
 悩んだ結果、先生に相談して職員用の女子トイレを使わせてもらった。少し変な顔をされたが、そもそも俺が女子トイレに入りたいだけの変態なら勝手にそうしているだろうということで了承された。異性と身体が入れ替わった奴なんてどう対応したらいいのかわからないので、ひとまず申し出は受け入れておこうという事なかれ主義的なものも理由の一つだろう。
 そして放課後になって、俺はダンス部の練習場を訪れた。練習をしていた部員たちは、俺の姿を認めると手を止めてこちらを見る。ダンス部の部員は全員女子だ。警戒するかのようであり、しかし微妙な感情も感じ取れる。
「お願いがあって来ました。俺、……私、自分も学校祭のステージで踊らせてください」
 事前に何度も頭の中でシミュレーションした言葉を述べて、深々と頭を下げる。はっきりと想いを伝えることはできたが、自分のことをどう呼ぶべきかで少しブレてしまった。
「俺」は違う。でも「私」というのも違う気がした。彼女らは、俺が軽率に高部実桜に成りすまして利用しようとすることを何よりも嫌うだろうから。そういうふうに受け取られたくはないと思った。
「なんで?」
 一歩前に出てそう問い返したのは、俺たちと同じ三年生でダンス部の副部長を務める女子だ。たしか尾崎 おさき樹里 じゅり。実桜の私物を色々と見た限り、きっと実桜と樹里は親友だったのだろうと思う。
 樹里の表情は敵意に満ちていた。彼女にとって俺は親友の身体を奪い、そして死に追いやった仇に他ならないはずだ。それが今になって一体何を言い出すのか。そういう思いを抱いていて当たり前だろう。
「きっと高部さんは、学校祭のステージに立ちたかったと思う。もうそれは叶わないけど、この身体だけでもステージに立たせてあげることが、彼女への弔いになると思うんです」
 ダンス部の三年生は10月の学校祭での発表を最後に引退することになっている。三年間の集大成となるステージという訳だ。
 ただの偽善で自己満足。勝手に罪滅ぼしをした気になりたいだけ。そう言われても反論のしようもない。だが、高部実桜も学校祭のステージに立ちたかったはずという想いには確信がある。俺は高部実桜として、その想いに殉じたい。
「ウザい」
 樹里の返事は素っ気なかった。ただそれだけ言って、彼女は練習に戻ってしまう。他の部員たちも同様だ。
 驚きはない。温かく迎え入れてもらえるはずがない事なんて、俺だってわかっている。それなりに覚悟はして来たさ。
 俺は彼女らの後ろで、勝手に練習をすることにした。見様見真似だ。ダンスなんかしたこともないし、その動きはただクネクネしているだけと言われても返す言葉がないほどぎこちない。正直照れ臭くもあるが、そんなこと言ってもいられない。
 でもなんとなく、元々の自分よりも身体にキレがある気がする。振りがすんなり身体に馴染むような感覚だ。きっと身体が覚えている、というやつなのだろう。
 次の日も、その次の日も、夏休みに入っても毎日練習に勝手に参加した。ずっと無視されてはいたけど、追い出されなければそれだけで十分だった。
 それから勉強もした。実桜になるために、彼女の持っていたものを身につけたり、女性向けのファッション誌を読み漁ったりして。少しでもこの身体に相応しい中身になろうとした。そんなことばかりをずっと考えていた。
 化粧の仕方とかは母さんに聞いてみたりもした。でも、「しんちゃん、男の子なんだから化粧なんてしなくていいと思うな」なんて言われて、何も教えてもらえなかった。
 そもそも最初からこんな調子で、初めて生理が来た時も何も教えて貰えず、大失敗した苦い経験がある。頼ることはできない。実桜の母親に対しても、正面から顔を合わせる勇気がまだ出なかった。
「いい加減にしてほしいんだけど」
 しかし、夏休みのある日のこと、ついに樹里に詰め寄られた。誰よりも早く来て自主練を始めていたところだから、周りには他に誰もいない。俺は、「やらせて欲しい」と答えることしかできなかった。
「もうやめてよ……」
 樹里の声は震えていた。彼女は俯きがちで、俺の顔から眼を背けようとしているように見えた。むしろ、俺の顔ではなく、実桜の顔を見れないと言った方が正しいのかもしれない。
「もう実桜は死んじゃったんだって、謝ることもできないんだって、気持ちの整理をつけたいの。それを受け入れるしかないのに、でも目の前に実桜がいるんだもん。何処からどう見ても実桜は生きてるのに、でも絶対にあんたが実桜じゃないこともわかる。いったいあたしたちはどんな気持ちでいればいいの!?」
 ぶつけられた感情。とても受け止めきれない。そんなことまで俺に言うなよって、泣き言も言いたくなる。でも俺は自分のことで精一杯で、周りがどう思っているかなんて考える余裕はなかった。それは事実だ。
「ごめん。でも俺は高部さんになりたいんだ。この身体で生きている以上、そうするしかない。本人がどう思うかは、もうわからない。でも、残された俺にとって、身体だけでも高部さんの人生を全うさせてあげることしか、彼女にしてあげられることが思いつかない。それに、そうじゃないと、俺は自分が何者なのかもわからなくなりそうで、もう辛いんだ」
 何を取り繕うこともできなかった。ただ、ぽつぽつと思いの丈を吐き出す。樹里は口を一文字に結んで、じっと考え込んでいる。
「入れ替わったのは事故だった?」
「こんなことが起こるなんて、思うわけない」
「どうして、襲ったりした?」
 その質問に、一層空気が張り詰めた気がした。思えば、結局その反省は棚上げをしてきた。どうしてだろうか。異常事態に気が大きくなっていたから。異性の身体に興奮したから。どちらも正解ではある。でも一番大きいのはそれではないと思った。
「馬鹿にされたくなかった。わかってほしかった。俺だってそれなりに、一生懸命生きてたんだって。あまりにも絶望的な顔をするからさ。俺だって対等な人間なんだって認めて欲しかった。楽して幸せに生きてるように見えたから、まるで天罰でも下してるつもりだったんだ」
 まとまらない。上手い言葉なんか出てこない。それでも心にわだかまっていたいたものをそのまま吐き出した。そうして初めて気付く。俺はただ八つ当たりをしていただけだったんだ。
 自分という存在に勝手に絶望して、ままならなさを凶器に変えて振り回していた。あたかもそれが正当な権利であるかのように思い込んで。自分で自分を過小評価した癖に、それを誰かから押し付けられたものだと吹聴した。
「でも、全部勘違いだった」
 入れ替わって、本当にどうしようもない行き詰まりにぶち当たってようやく気付いた。俺の人生は別に何も終わってなんかいなかったんだと。自分は何者なのかなんて思い悩むこともなく、普通に生きていられただけ上等だった。
「あたしは、実桜が死ぬ原因になったあんたが許せない。でも、たとえ実桜じゃなくても、その生きた痕跡はどこかで生き続けていて欲しいとも思う」
 重苦しい沈黙が訪れる。俺はそれ以上口を開けなかった。気づけば、他の部員たちも練習場へ続々と集まってきていて、そのただならない雰囲気に息を呑んでいる。
「踊ってみて」
 口火を切ったのは樹里の方だった。音楽がかけられる。言われるがまま、俺は練習の成果を披露した。きっと実桜がするように、精一杯の笑顔で。
 彼女を始め、部員たちの厳しい視線が注がれる。曲が終わっても、誰も口を開かない。お互いに顔を見合わせながら、無言の意思疎通をしているようだった。
 やがて、三年生の一人が「踊れてはいる」という評価を口にした。それだけでも、努力が報われた気がする。
「全体練習、入る?」
 続いて樹里が言った言葉に、一瞬耳を疑った。だが、認めてもらえたのだと理解した瞬間、ぱっと目の前が開けたような感覚になった。
「はい! ありがとうございます!」
 深々と頭を下げる。すると、続けて樹里は言葉を続けた。
「っていうかさ、その学校指定のソックス。ダサいから履かないで。誰も履いてないじゃん。あと、その髪留め、たしか小学校の時の友達にもらって大事にしてるって言ってたやつだと思うけど、今付けるには子どもっぽすぎるから、しまっておいた方がいいよ」
 この日以降、俺は部員の中に加わって練習することが認められた。まだ壁は高く、打ち解けるにはほど遠いけれど、女子のコミュニケーションのやり方みたいなものを間近に見られるようになった。それに女子として、実桜として、変なところがあればツッコんでもらえるようになった。ありがたく思う。
 俺もこれで調子に乗らないよう気をつけた。俺が真摯に実桜になろうとしているのだと信じてもらえるように。更衣室は使わないし、相変わらずトイレも別。ボディタッチなんてもってのほか。振り付けにあるハイタッチすらエアでやるほど、彼女たちには心を砕いた。
 そして、学校祭当日。ステージ発表前に全員で円陣を組む。これまでの努力の甲斐あってか、自然と肩を組ませてもらえた。皆で顔を付き合わせながら、気勢を上げる。
 そしてステージへ。体育館は照明が落とされているが、それでも舞台へ注がれる眼差しはよく見える。思えばこれだけ多くの人前で踊るのは、俺にとっては初めての経験だ。飲まれないようダンスに集中する。
 ステージを照らすライトの眩さ。そして光を反射するお客さんの瞳。まるで星空を見ているみたいだ。幻想的な時間。実桜がダンスに打ち込んでいた理由が今になってわかった気がするし、このステージに立ちたかっただろうというのが間違いないと確信した。
 そして音楽が止まる。決めポーズ。完璧だった。今までで一番うまくできたと思う。見れば樹里も、他の三年生たちも感極まって涙を流していた。抱き合ってお互いに称え合う。
 その輪の中に俺も入るよう促された。少なくともこの瞬間、彼女たちの中に俺との壁やわだかまりなんてなくなっていたのだろう。俺は成し遂げることができたんだ。外道なクソ男から、仲間の一人になるまで見直してもらうことができた。
 思えば、努力して何かを変えたことなんて、生まれて初めてのことかもしれない。何かを目指して、一心不乱に取り組むなんて自分にはできないと思っていた。でも全力で向かえば、得られるものはちゃんとあったんだ。でもその瞬間、理解してしまう。
 俺は、実桜にはなれない。
 今俺の胸を満たしている感情は、安堵だった。自分の肩に乗せていた重荷を、一つ無事に降ろせたという開放感だった。俺が実桜だったなら、きっと彼女らと同じようにもっと色々な思いが込み上げていたはずだ。
  実際に練習した期間は四か月ほどしかなかったとはいっても、それはそんなに短い時間ではないはずなのに。それなのに、涙の一つも流すことができなかった。どんなに頑張ったところで、心の形を他人と同じにしようだなんてできないのだ。
 まったくもって、おかしな話だ。他人そのものになろうだなんて、いくらその他人の身体に入っていたとしても、土台無理な話だった。そんな簡単なことに、今更になってようやく気が付いた。ただの逃避だったんだと。
 
 
 
 「こちらですね」
 係の人が指し示した白い木箱には、太田真矢の骨壷が収められている。未だにこの遺骨は太田家も高部家も受け取りを拒否しているままで、身元不明者と同じ扱いで役所に保管されている。当然名前も付されていない。
 手を合わせる。こんな所にあいつはいないだろうとは思うが、太田真矢に対しても報告しておきたいこともある。
 就職先が決まった。これからこの街を出て、一人で暮らす。だがそれは、太田真矢としてではない。そして高部実桜としてでもない。
 結局あの日、俺たちは2人とも死んでいたのだ。ここに残された俺は、太田真矢でも高部実桜でもどちらでもない。身体が変わってしまった以上、太田真矢のままではいられない。でももちろん高部実桜になったわけでもない。そのことに辿り着くまで、随分遠回りしたような気がする。
 だから俺は、どちらでもない新しい人間ということになる。役所の人にも、そういうことにしてほしいと頼んだら、本人の意思を尊重することにするとか言って意外とすんなりと認められた。
「ちなみにこれは、あなたに引き取っていただいてもいいんですよ」
「そうかもしれません。でも、ごめんなさい。私が持つべきじゃないと思うんです」
 あの日死んだ2人の遺骨は、やはり2人の遺族のもとで弔われるべきだと思う。係の人は困ったような表情だ。厄介払いをしたいんだろうなとは思っても、ちょっとこれは譲りたくない。
 今日は卒業式だ。終わったその足でここへ来た。この女子の制服を着ていたのは、俺にとっては1年も満たない期間だが、それでも最後となると名残惜しいような感覚もあるし、面倒な手入れから開放されたという気持ちもある。
 長かった髪はバッサリ切った。これだけ伸ばすのは大変だっただろうなというのはよくわかっていたし、もったいないという気持ちもあった。でもこれから独り暮らしで働くということを考えると、綺麗に保つのは難しそうだと思った。
 その代わりというわけでもないが、ネイルチップを付けてもらった。ピンクの桜モチーフのものだ。春らしくて華やかで気に入っている。ついつい楽しくなって、さっきから何度もつま先を見てしまう。
 その一方で、元々の太田真矢の持ち物はすべて処分した。好きだったプラモデルも含めてだ。どうせ太田の家にはもう帰るつもりはないし、持っていくのも大変だ。決めたことに後悔はないけど、母さんが泣いていたのだけはキツかった。
 失ったものはたくさんある。でも悲嘆に暮れるのはもうやめにしようと思った。現に俺はまだこうして生きているのだから。生きていくしかないのだから。たとえ過去に何があろうと、それがどれだけ重たいことであろうと、全てを背負って人生をやり直すしかない。
 そして生きていく以上は、最高に楽しくて充実した日常を手に入れる。それが、それだけが死んだ2人に報いることができる唯一の方法なのだと思う。
 つまるところ、人生に線路なんてなかった。このようにしかいられないなんて制限もないし、このように生きればいいなんて道標もなかった。いつだって辿り着くのは、自分で切り開いて進んだ道の先。歩む力は自らの覚悟と意志だ。
 役所を出ると、春の日差しがホコリに反射して輝いていた。まるで光の壁のようで、目が眩むほど。思わず顔を背けて立ち止まりそうになる。それでも風が、何に遮られることもなく吹き抜けていた。それに背を押されるように、足を踏み出す。
 これから俺は、ただの1人の女性として生きていくことになる。新しい名前は、真実 まみにした。人生が、始まる。

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