やたら入れ替わってセックスしたがるオーダーメイド・セクサロイドと入れ替わってセックスする話
これはセクサロイドのチルと、そのマスターである『彼』の物語である。
◇
小鳥のさえずるようなハミングが聞こえてきている。
セクサロイドのチルが、アパートの台所で料理をしているのだ。
作っているのはシチューだろうか。それらしい匂いに鼻をひくつかせて彼は台所のチルの後ろ姿を眺めた。
チルはシンプルな黒いワンピースの上にフリルのついた白いエプロンを着用していて、それがどことなくメイド服のような様相を呈している。シチューを小皿に取って味見をするその様子まで様になっているのだから、なかなかだ。
肩までの栗毛と、短いスカートの裾が、彼女の鼻歌にあわせてゆらゆら揺れていた。
ずいぶんと機嫌が良さそうだな……と、鼻歌交じりに調理を続けるチルの腰を眺めながら彼は思った。
といってもチルはたいていいつも機嫌がいい。
人間ではないから、感情の大きな振れ幅というものがないのだ。人工知能によって抑制されているから。
チルは彼が大枚をはたいて購入したバイオ・タイプのセクサロイド(※セックスもできるアンドロイドのこと。中でもチルは一般にはそれほど流通していない、人間に由来しない合成細胞を用いて作られた高級品である)で、彼の理想の見た目と中身を追求した人造の恋人だ。
ゆえにチルの容姿も性格も彼の理想の美少女そのものである。
そんな子が自分のアパートで料理をしている。それも機嫌が良さそうに鼻歌まで歌いながら。
きっと幸福というのはこういう形をしているのだろう、と彼は思った。
もしも彼が後ろからチルに近づいて抱きしめたなら、彼女は快く彼を受け入れてくれることだろう。抱きしめ返して、唇を重ねて、それだけではないことをしてくれることだろう。それも、多大な愛情を以て。なにしろチルは彼の理想のセクサロイドなのだから。
そんなシチュエーションを想像しながら、彼はぼんやりとチルの後ろ姿を眺めていた。
「ふふっ、楽しそうですね、マスター」
しばらくするとチルが台所から戻ってきて、床に敷いたラグの上に座っていた彼の隣にちょこんと腰掛けた。彼の肩に頭を預け、甘えるような視線で見つめてくる。
「料理は終わったのかい?」
「晩ごはんの準備までばっちりと。あとは好きなだけ遊べます」
「遊ぶ?」
「ええ」とチルはおもむろに彼の首に腕を巻き付けるようにして抱きついた。
そのまま彼の体を床に押し倒して、れろ……と彼の首を小さな舌でもって舐める。ちろちろと鎖骨をくすぐるようにして舐め、その間に彼女の手は彼の胸のあたりに指先で小さな円を描いている。
「こら、ちょっと」と彼はじゃれつくチルに小言を漏らすが、
「ずっと私のお尻をご覧だったでしょう?」ととりつく島もない。
そのままチルの指は彼のズボンの上まで這っていき、テントを張ったようになっているそこを指先でカリカリとなぞる。そして勃起したペニスを指で掴んで撫で擦り、そしてクスッと笑った。
「マスターは勃起していらっしゃいます」
「それは、チルが触るからだろ」
「そうですよ?」
クスクスとチルは笑っている。その笑みは淫蕩だ。そして彼女の目は青く爛々と光っている。
人間のものではない視線で彼の目の奥を見て、彼の思考を読んでいるかのように察して動く。これが最高級セクサロイドのチルである。
チルの高性能な目にはマスターである彼がセックスをしたがっていることなどすっかりお見通しだったし、マスターの隠している『それ以上の望み』さえも見通しているのだった。
だからチルはズボン越しに彼のペニスを握ったままいったん動きを止め、そして彼の目を見たままこう切り出した。
「先日チルはとあるアプリを見つけたのです」
「あ、アプリ?」とペニスを愛撫されたままの彼は仰け反りながら先を促す。
「そう。『入れ替わりアプリ』です」
「──ッ」
入れ替わりアプリというのはセクサロイドおよび電脳処理を施した人間専用のアプリで、用いたモノふたりの体を入れ替えることができるアプリだ。
正確には実際にボディを入れ替えてしまう訳ではなく、脳幹付近に設置されてあるポートから脳への入力信号と出力信号を相手の互いのポートへと意図的に混線させて交信し、相手の体の行動と感覚をリアルタイムに交換してしまうというアプリである。
あくまでも脳そのものを交換するわけではなくリアルタイムで信号を交換し続けるだけなので、ふたりの距離が離れすぎると入れ替わり状態が解除されてしまう欠点があるが、それはそれとして近頃ちまたで密かな人気を博しているアプリであった。
「マスターは女の子になってみたいのでは?」
「そ、そんなこと」
「チルに隠し事をする意味はありません、マスター。私はあなた様のためのセクサロイドです。あなた様の最も近くに居て、あなた様を最も深く理解するようカスタマイズされた、あなた様だけの存在なのですよ?」
チルの口調そのものは淡々としていたが、しかしその目は慈愛に満ちていた。まるで『彼の望みを叶えることこそ最上の喜び』と言わんばかりだ。
いや、事実チルにとってはそうなのだ。彼の望みを叶えることこそが彼女の存在理由であり、生きる目的であり、人生の使い方なのだ。
チルには人間と同程度の人格と感性と趣味嗜好が備えられているが、しかしそのすべてが彼の満足を望んでいた。
一方の彼は「~~~~ッ」と悶絶をしていた。
チルに密かな嗜好を見通された上に、それに適うような解決策を提示されてしまったのだから、羞恥心を刺激されてしまうのも無理はない。その上チルにペニスを刺激され続けて性感をあおられ続けているままなのだ。思考さえもそちらに流されていくのも無理はない。
そんな彼の悶絶を眺めながら、チルは愛おしげに、そして献身的に言葉を紡ぐ。
「ねえ、マスター、入れ替わりましょう? チルの体になって、マスターのために誂えられたチルの体を味わいましょう?」
その言葉の響きは非常に蠱惑的な響きをもって彼の脳に到達し、彼は思わずこくりと頷いた。
なにしろ、彼はチルと入れ替わってセックスがしてみたくてしかたがなかったのだ。
「本当に、入れ替わるの? その、チルは嫌じゃないの」
「私に『嫌』という感情はありませんよ。でも──」
「でも?」
「マスターが私に本心をぶつけてくれないのは嫌です」
「……」
そこまで言われてしまっては彼に返す言葉はない。
だから彼は交換用のシール型アタッチメントを首の裏に貼り、チルもまた青色に光るヘッドフォン型の通信機を装備した。
この外部アタッチメントを用いて入れ替わりを実行するのだ。
すると入れ替わりアプリが起動し、彼の網膜に認証用のボタンが投影された。
「これを『許可』すると私たちの体は入れ替わってしまうんですよ」とチルは歌うように言った。
チルと、入れ替わる……その未来を想像して痺れるような感覚が背筋を走る。
ごくり、と彼は唾を飲んだ。
妙にドキドキしていて、なんだか気恥ずかしい。そんな彼の様子をチルもまた固唾を飲んで見守っている。
彼は数秒間悩んだが、結局『許可』のボタンが浮いているあたりを指で押して、許可をした。すると視界でカウントダウンが始まる。
──3.2.1...
そしてカウントがゼロになった瞬間、彼の視界はぐるりと回って、そしてふたりの体は入れ替わった。
◇
そして彼が目を覚ますと、彼とチルの体は入れ替わっていた。
目線を下げれば白いエプロンに守られた彼女の肢体があり、スカートの奥をすぅすぅと風が通り抜けている。おそるおそる指を動かして自身の胸に触れてみれば、あまり大きくはないが確かに彼の理想の通りの柔らかな胸がそこにある。
「チルに、なってる。あ、声まで……」
思わずひとり言が口から出て、その声の清らかな音にまで彼は驚いた。彼の操る体は理想の美少女そのものであり、彼が指を動かすだけでその全身に容易に触れることができるのだ。そのことに彼は思わず感動していた。
「ふふっ、マスター、お顔が真っ赤ですよ?」
クスクスとした笑い声が聞こえ、そちらを見ると『彼』──正確には彼の姿になったチルが彼を眺めていた。
チルは彼に向けて「はい」と鏡を手渡してきた。
そこを覗くと確かに美少女が、すなわちチルの顔になった自分が映っている。彼女は顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに、けれどもどこかうれしそうな顔で自身の胸を揉んでいる。
(……胸?)
「あっ、ご、ごめん!」
自身のセクサロイドとはいえ許可なく胸を揉むのはマナー違反だ。慌てて彼が胸から手を離すとチルはクスクスと笑った。
「今は──というかかねてよりずっとですが──その胸はマスターのモノですから、好きなだけ揉んでもいいのですよ?」
「あ、う……」
「ほら、脱っぎ(※脱ぐこと)して、直接触れてみましょう?」
笑顔のまま後ろに回ったチルにエプロンを外され、ボタンを外され、さらにブラジャーのホックを外されると小さな胸がぽろりと出た。
主観目線で見るチルの胸は、やはり愛らしかった。たおやかな曲線を描いて体から突き出すみたいに胸板に乗っかっている。その肌は磁器のように白い。中心にはひそやかな乳首がちょこんと乗っかっていて、それはぴくぴくと震えているようだった。
「ほら、どうぞ?」と後ろから彼女の手が伸びてきて彼の手を覆うようにしながら導いて、彼は自身の胸にそっと触れた。
(わ、手が吸い付く)と彼は思った。それほどしっとりとした肌だったのだ。
そのまま胸をやわやわと揉むと指に柔らかな感覚が伝わってきて、同時に胸を揉まれている感覚が胸から伝わってくる。
「あ、ふ……♡」
「気持ちいいでしょう? もう少し力を入れて揉んでみては?」
彼の後ろに立ったままのチルが耳元で低い声を出し、ぞくぞくとした痺れが背筋を這う。そのままやわやわと揉んでいると体がどんどん発情していくのがわかる。
セクサロイドの体はすみやかに発情するようにできている。とくに今はチルの側で発情度合いをコントロールしてるから、体が熱く火照ってくるのは当然だ。
「お体に触れていきますね。マスターはそのまま胸を楽しんで」
と言いながらチルの指が彼の内ももを這い、彼はピクリと反応をした。それでもチルの指は止まらずにスカートの中へと侵入をしてショーツを上から撫でてくる。
ショーツの奥にある割れ目を、その存在を確かめるかのように撫でるチルの指。
「ん、んんっ♡」と彼の喉から自然と声が漏れる。
(声、出ちゃうの恥ずかしいな……)と彼は思うけれども、止められない。背中側に大きなチルが居て、二人羽織みたいな体勢で秘部を撫でられているのだ。逃れようはない。
そのうちに乳首がぷっくりと膨れてきて、彼はそれを指で摘まむ、そしてコリコリとそれを刺激する。
「マスターのここ、どんどん湿ってきましたよ? もうぬちゃどろ。私よりもセクサロイドの才能がありますね」
クスクスと笑いながらチルが言い、ショーツをそっと下にずらして脱がせた。それだけでぬとぉ♡と糸を引いて愛液が垂れ、彼の内ももを伝っていく。
「~~ッ♡」と彼は羞恥の悲鳴を上げたが、チルは聞き届ける様子はない。
そのまま彼の膣内につぷりと指を挿入してきて、そのまま膣内をくちゃくちゃとかき混ぜ始めた。
(うあ、指……っ、入ってきてるっ、んあ、こんなの知らないっ♡♡)
体の内側に触れられる初めての感覚に彼は思わず仰け反った。未知の感覚に当惑して、感じてしまっている。怖いくらいに気持ちがいい。快感から逃れようと腰がヘコヘコ揺れるが、しかしその程度で逃げられるものではない。
チルが、彼が感じていることなど一切気にせず膣内に指を出し入れしてくるのだ。とくに膣内で指を折り曲げて腹側のある一点を押されると、だめだ。足ががくがくと震えてしまうほどの快感が駆け抜けていってしまう。体から力が抜け、ただ感じて喘ぐだけの物体になってしまう。
「んあ、あ、あ、ああっ♡♡」
思わず上を向いて喉をそらせながら彼は喘いだ。
その顔はすでにとろとろに蕩けた美少女の顔だ。
そんな様子をチルは楽しみながら彼を追い詰めていく。ぐちゅ、ぐちゃ、にちゅ、と粘っこい愛液の音を響かせながら。
「怖がらなくていいですよ。力を抜いて、気持ちいいのに集中して……」
静かにそう言われる。
同時に腹の奥をトンッ♡と押される。
そうなるともうダメだ。
彼は達した。
「~~~~~~ッッッ♡♡♡」
ぐいっと思い切り腰が反った。
びくんびくんと震え、チルの指に膣が食いつき、体が絶頂している。ひゅく、ひゅく、ひゅくっと体が痙攣している。彼の脳内では快楽のシャボン玉がいくつも弾けて視界が真っ白に染まっている。射精とは違う、女性の絶頂。
「あは、イッちゃった。かわいい……」
とチルが耳元でひとり言を漏らし、彼はそのチルの体にくたっと背中を預けて脱力した。
「気持ちよかったですか、マスター?」
「あ、う……♡」
「でもまだ終わりじゃないですよ」
「え?」という前に彼の体はベッドに転ばされる。
「あ」と思ったときにはベッドに仰向けで、目の前には『自分』が爛々とした目でこちらを見下ろしていた。
そのままスカートを剥ぎ取られ、裸にされた。視界には自分の胸の膨らみと、ペニスの生えていない女性的な股間が見える。そこには一本の毛もなく、しかし淫蕩にヒクヒクと震えてペニスを待っている。
「マスターはおちんちんが欲しくなっちゃったんですよね」
とチルが言いながら自分の髪をかき上げた。あらわになったチルの目は欲情に塗れた、けれども意志の強い目だ。服を脱ぎながら、そんな目でチルは彼を見つめてきている。
犯される! と彼は思った。
思ったが、しかし、それは恐怖ではなかった。
むしろ『犯してもらえる』という期待だった。女として、あるいはセクサロイドとしての、期待。
その期待感で彼の下腹部はきゅうううん♡と収縮をした。
「そん、な……っ♡」と彼は否定をしようと試みたが、しかし体は明確に欲情の反応を示している。それは誰の目にも明らかだった。だから反論は無意味だ。
そのことを示すかのようにチルは彼の足を掴み、がばりと開いてみせた。
男の力で大きく足を開かされる。ぐぱ……♡と足だけでなく秘部も開いてしまう。
つまり彼は仰向けで両足を大きく開いた姿勢になった。
これはいわゆる正常位と呼ばれる姿勢だ。通常ならば男性が決して取ることのない姿勢であるが、しかし彼は今チルの──つまり女性型セクサロイドの体になっている。ゆえに彼がその姿勢になれば彼の女性器はくっぱりと唇を開き、相対するチルに向かって媚びるようにヒクヒクと震えてみせるのだ。
そのことに彼は多大な羞恥心を覚えて顔を真っ赤にしたが、対するチルはそれを「あは♡」と笑った。
「マスター、かわいい。女の子みたいに真っ赤になっちゃってる」
くすくすと笑われながらチルは彼の秘部に顔を近づけ、ちゅうう♡と吸った。
「ひああああっ♡♡♡」と思わず彼は悲鳴を上げた。
チルの唇は彼のクリトリスを覆って、陰圧をかけながら舌で舐め、たたいてくる。視覚的にも、そして様子が体の感覚を通しても理解できる。
自分の、ペニスの生えていない股間を吸われている、その感覚に彼は悲鳴を上げながら強く仰け反った。
「それだめっ♡♡ チル、そこ吸ったらだめなやつだからぁっ♡♡」
「だめじゃないですよ? 気持ちいい、でしょう?」
「んあ、あああ♡♡♡」
彼は達する。最も鋭い性感を与えてくる場所を的確に刺激されて、達さないことはできないのだ。そうして何度も何度も達し、そのたびに脳内に閃光が走って体から力が抜けていく。
それでもチルは止まらない。むしろ楽しそうに彼の体に覆い被さってきて、そして彼の濡れそぼった秘部に反り立ったペニスを接触させた。
「あっ♡♡」と彼は自身の秘部に接触しているチルのペニスを見ながら思わず声を漏らす。
「これからマスターはおちんちんを入れられて女の子になるんですよ」
「や、まって、待ってチル」
「待ってあげてもいいですけど、でも本当は入れて欲しくてうずうずしているんでしょう?」
「──ッ♡♡」
図星を突かれて彼は思わず黙った。チルの言うとおり、彼のボディはペニスを入れて欲しくて気が狂わんばかりだったのだ。
そうして彼が真っ赤になって黙り込み、そっぽを向いてしまったのを満足げにチルは見下ろして、そして彼の腰を掴んだ。
「あ♡♡」と言う間もなく、一気に、ズンッ♡♡とペニスが彼の膣奥までを一気に穿った。
「あ~~~~~~ッッッ♡♡♡」
「ふふっ、入れただけでイッちゃったんだ。かわいい」
思い切り仰け反って達している彼を見下ろしながら、チルはクスクスと笑う。性器を彼に挿入しているチルもまた性感を感じてはいるのだが、それ以上に彼のよがり方が強いのだ。
もっとも、それは当然のことだ。彼の、すなわちチルのボディはセックス専用にチューンナップされたものである。そこで発生した性感は、本来的には人間である彼には毒になり得るほどに強いといってよい。
今回彼らが用いている入れ替わりアプリにはリミッターが設けられているのだが、しかしそれ故に彼は『ギリギリ人間が狂わないでいられる上限値の快楽』を強制的に流し込まれていることになる。
ゆえに、彼はペニスを挿入されただけで達してしまった。しかし、当然ながら挿入をしただけではセックスは終わらない。
「じゃあ、動きますねー」
そう、チルが動いて、射精するまではセックスは終わらないのだ。
「まっ、まっへ♡♡ いま動かれたら、おかひくなるっ♡♡」
「大丈夫ですよ。チルのボディは思いっきりピストンしたくらいでは壊れません」
「んにゃ、あ、あ、あ♡♡ でも、でもずっとイッてるッ、イッてるからぁっ♡♡」
「はいっ、マスターのイキ顔とぉってもかわいいですっ」
チルは彼に覆い被さるような体勢で何度も何度も腰を打ち付けている。そのたびにパンパンと肉を打つ音が響き、彼と彼女の結合部からは白く泡立った愛液が止めどなく飛び散っている。
それだけで彼は狂わんばかりに感じているのだろう。シーツを後ろ手に掴みながら「あ、あ、あ♡♡」と甘ったるい声を上げ続けている。
もちろん、チルもまた感じているのだろう。彼の膣はチルのペニスから精液を搾り取ろうと数百のヒダを動員して全力で抱きしめているのだ。その縋り付いてくる媚肉にチルは思わず熱い息を吐き、自分の下で喘いでいる愛しい彼に目を細める。
チル自身にも余裕はないが、こんなにも可愛らしく喘ぐ彼をもっと見ていたい、そんな気持ちで彼女はひたすらに腰を打ち付ける。
何度も何度も何度も何度も、激しすぎるほどに。
「んああ、あああっ♡♡ やだ、もうだめ、こわれる、こわれるから♡♡」
「壊れても、愛しています。チルは壊れてもマスターのことを愛し続けます」
と、チルが思わず本音を漏らした瞬間。
「あ゛~~~~~~ッッッ♡♡♡」
彼がまず先に深く達した。すると彼の膣は全力でチルのモノを締め上げる。
その刺激に、チルは抗わなかった。
「──ッ」と一瞬だけ息を止め、そして彼女は射精した。
びゅるるるるっ、と激しい射精だった。彼の最奥地に叩きつけるかのような勢いの吐精だ。それもほとんどプレスをするみたいに覆い被さって、子宮口に亀頭を接触させながら精液を吐き出し続けている。
セクサロイドの子宮口にはセンサーがある。ご主人様が射精したことを感知するためのセンサーだ。彼はそのセンサーでチルの射精を感じながら、忘我の淵へと達したのだった。
きもち、よすぎぃ……などと薄れゆく意識の中で蕩けたことを考えながら。
「ふふっ、イキすぎて気を失っちゃったマスター、可愛い」
一方、射精を終えたチルは彼の涙を拭ってやりながら、愛しのマスターを目を細めて見下ろしていたのだった。
◇
「どうですかマスター、チルの作ったシチューは美味しいですか?」
「……ん? うん、いつもながら美味しいよ」
「ふふっ、そうですか」
一通りのセックスを終えた後、元の姿に戻った彼はチルの作ったシチューを食べていた。
シチューは、旨かった。
彼の好み通りの味付けで、おまけに目の前にはそれを眺める愛しの美少女までいるのだ、美味しくないはずがない。
チルは多量のたんぱく質を消化できない関係でシチューをともに食べることはできないが、それでも愛おしそうに彼を見つめていた。チルはいつもよりもずっと機嫌がよさそう、というかツヤツヤしているように見えた。
セックスが気持ちよかったのかな、と彼は思った。
思いながら、彼は自分の手を見下ろしてみる。それは、男の手だ。やや色が白く、節と骨が目立っていて、指が長い。ぐ、ぱー、と握り、開いてみれば彼自身の意思のままに自由に動く、彼の手。
彼の手のさらに下には空になったシチューの皿があって、だから彼はそっとスプーンを皿の上に置いた。
「……? どうしました、マスター?」
食事の手を止めた彼に、チルは不思議そうに首をかしげた。くりくりとした大きな瞳を彼に向けてジッと見つめてくる。
「チルは、僕のことが好き?」と何の気なしに訪ねる彼に、
「はい、好きです」とチルは当たり前のように答える。
「じゃあ、男の状態の僕と、女の子……チルになっている僕だったら、どっちが好き?」
「…………」
意味がわからない、という風にチルは人差し指を顎に当てて首をかしげている。機械には難しい質問をしてしまったかな、と彼は一瞬後悔したが、チルが言葉を選んでいるようだったのでそのまま待った。
そして「決して、誤解しないで欲しいのですが……」とチルは前置きをして、それから真剣な顔をした。
「チルは女の子のマスターが好きです。なぜなら、マスターがチルの体を使ってチルになっている瞬間こそ、私とマスターが真に繋がっている瞬間だからです」
「真に?」
「そう。男女のセックスというのは主に性器の結合を意味しますが、私たちの入れ替わりはもっと深い……肉体の共有という域に達している感じがします。マスターの意思がチルの体に入って、チルの体で何かを表現してくださる、その事実が私は嬉しいのです。だから、私は私──チルの体になったマスターのことが好きです」
真剣な顔で、チルはそう言い切った。それは彼女の本心なのだろう。基本的に鈍感である彼にもそのことは伝わった。
だから彼は合点がいったと言わんばかりに笑った。
「それが、やたら入れ替わってセックスしたがる理由?」
だが「いいえ」とチルは即時に否定した。
そしてチルは彼の指を取って、そっと口に含んだ。彼の指先をちゅっと吸って、爪の表面を舐め、指の裏に舌を這わせる。
それはフェラチオを思わせる動きだ。
その淫蕩な動きに思わず彼は唾を飲む。腰の奥で炎が灯るような感覚がして、しかしそれをどうすることもできない。
そうして唖然とする彼の指を丁寧に、丁寧に舐め、それからチルはじっと彼を見つめて言った。
「マスターの性癖が、入れ替わりたがっていましたので」
「うっ」
「思っていることはいろいろあれど、私は常にマスターの性癖が優先ですよ?」
「ほ、ほんとかよぉ……」
「本当です」
そしてチルはよだれまみれになった彼の指を自身の胸部へと導き、たおやかな胸の膨らみに接触させた。
チルの胸は、衣服越しにでもわかるほど柔らかく、温かい。
「──ッ」と思わず息を飲む彼に、チルはいけしゃあしゃあと言う。
「マスターは、チルとセックスがしたくなったのでは?」
「きみ、自分のヤりたいことに誘導してない?」
「セックスがセクサロイドの本分ですので」
「ああ言えばこう言う……」
「ふふっ、小生意気なセクサロイド風情を理解らせてやるべきでは?」
「まったく、きみは」
クスクスと余裕の笑みを浮かべるチルの体を、彼女に導かれるままに彼は優しく床へと押し倒していった。
そして、このあとめちゃくちゃセックスした。
結局のところ、彼もチルも互いのことが大好きなのだった。
どちらの体でも、どちらにしても。
しじままどせと申します。
この作品は某お友達とのオフ会の手土産として書いた作品を、某お友達の快諾を得て再編集して提出したものです。
webでは初公開となります。
これを読んだあなたが楽しんでいただけたのなら幸いです。
ありがとうございました。