ゴブリンと入れ替わって全てを奪われるシスターの話

魔王と呼ばれた存在によって支配され、各地を跋扈する魔物達によって人々の生活が、命が危険に晒されていた世界。
魔王率いる魔族と人間。長きに渡るその戦いは魔王が討たれるという形で終わりを迎えたのだが……彼の者の死に起因するものなのか、同じ時期に世界各地でとある異変が起き始めていた。

それは、『ダンジョン』と呼ばれるようになった遺跡が何の前触れもなく現れたこと。
ある地方では、鬱蒼とした森林の奥底に。ある地方では、魔物に占拠されてその住処となってしまった古い採掘所に。またある村では、なんと人が住んでいた一軒家のドアがダンジョンの入口へと変容し……と。人間の都合などまるで無視をして突如現れたそれらには数多くの魔物が蔓延り、魔王に代わる新たな脅威として人々を脅かす存在となりつつあった。

――それから数日後。各地に現れたダンジョンの内の一つ、とある村の近隣に現れたそれの内部を探索する者がいた。

(すごい……!外観はただの納屋だったのに、まさかここまで広大な空間が広がっているなんて……。特殊な空間魔法でも展開されているのでしょうか?それとも何か別の……)

白と黒を基調とする地味なローブに身を包んだその金髪の女性は何やらブツブツと呟きながら、いつ危険な魔物が現れるとも分からないダンジョンの中を悠々と進んでいく。
彼女の名は、リーサ・クレシュタイン。寂れた村にある教会をたった一人で管理しているシスターだ。
室内であるにも関わらず明るく照らされ、その外観を無視して広がっているダンジョン内の景色を興味深そうに眺めるリーサだったが、ハッと何かを思い出したかと思うと、半ば呆けていたその表情を引き締める。

(……っと、いけない、また悪い癖が。 そんなことよりも早く行方不明者を見つけてあげないとですね……)

この場所にいるのは、まだ見ぬ魔法への好奇心や探求心といったものが理由ではないのだと。そう自分に言い聞かせながらダンジョンの奥底へと足を進めていく。

彼女の目的は、迷い込んでしまった村人の救出だった。
もちろん、そんなことは一介のシスターの手に負えるものではなく、本来であればギルドへ正式な依頼を出し、そこに所属する冒険者によって成される一大事である。しかし彼女が住む小さな村にはそのような団体も存在せず、更には都市にあるギルドへ依頼するための金銭を捻出することが困難だったのも理由の一つではあったのだが……彼女が単身でダンジョンへと入ることになったのは、それ以上に大きな理由があった。

「ギ? ウギッ、ギィィィッ!!」

通路を抜けてある程度の大きさを持った空間へと足を踏み入れた瞬間。そこをうろついていた小さな魔物と目が合ってしまう。
子供と見紛うほどに小柄な体躯と、その全長に不釣り合いなほどに大きな生殖器を股間にぶら下げた全身が緑色の醜い生物。ゴブリンという通称で呼ばれているその魔物は冒険者の間では取るに足らない脆弱な相手だとされているが、戦闘能力を有さない者にとっては恐怖の、そして嫌悪の象徴とされている魔物だった。
その特徴の一つが、人間を犯し、孕ませるという習性を持っているということ。魔王が居なくなり、ダンジョン以外で魔物が生息できなくなった今となっては過去の脅威ではあるが、それ以前は数多くの人間がゴブリンの餌食となり、攫われた女性が生きながらに苗床とされるという凄惨な事件が繰り返されていたのだ。
しかし、そんな相手を前にしてもなお、リーサは落ち着いた表情を崩さない。それどころか、むしろ哀れみすら感じさせる目でもってゴブリンと対峙していた。

「そうですか。魔王が去ってもなお、貴方達はこの世界に縛られ続けるのですね……」
「ガガッ……ギッ!?ギッ、ギィィィィッッ!!」

目の前に現れた女体に目掛けて本能のままに飛びかかろうとするゴブリンだったが、彼女が宙に手をかざした瞬間ピタリとその動きを止めてしまう。それは何も、ゴブリンが突如として改心してリーサを襲うことを止めたわけではない。彼女が持つ力……『魔法』によって、身体の動きを制限された結果だった。

この力こそ、リーサがダンジョンへ赴くことに誰も異論を発さなかった要因である。彼女は持って生まれた膨大な魔力やそれを扱う天性の才能により、一介のシスターという身でありながら一流の冒険者に匹敵……いや、それすらも凌駕するほどに強大な魔法を扱える力を持っていたのだ。

「誰も傷つけることができないように、貴方の中にある『四肢を動かす』という機能を半日程度制限しました。それと、この魔法も」
「ギッ……ギィィッ!!?」

リーサがかざした手のひらから、どこか暖かさすら感じられる光の球体が浮かび上がる。ふわふわと漂ったそれは棒立ちになっているゴブリンへと吸い込まれていき、それと同時にゴブリンは苦しむような声を上げ始めた。

「私の中に在る慈愛の心を少しだけ分け与えました。 魔物の本能に抗うのは苦しいかもしれませんが……頑張ってください!きっと貴方も正しい存在になれるはずですから」
「グギャァァッ!?ギッ、ギィィィィッ!!」

信仰心の厚いリーサは戒律にある『不殺』を貫くために、たとえ相手が魔物であってもその命を殺めたことはない。その戒律を守りながら魔物を無力化する手段として用いているのが先ほど放った光の球体なのだが……彼女が独自に創り出したその魔法は、魔物にとって呪いのような効果を持つものだった。
それは自らが信じる戒律や価値観を、聖なる魔力を媒介にして放出し、無理矢理相手に植え付けるというもの。それを受けた魔物は相反する力によって徐々に蝕まれ、数日後には例外なく命を落としていたのだ。
しかし、彼女はこれまでその魔法を放った魔物が村を襲わなくなったことを「改心したのだ」と思い込んでいるため、慈愛に満ちた微笑みと共にゴブリンを見下ろす。

「では、私はこれで失礼します。 もしも善良な心を持つことができたら、遠慮せずに村の教会に遊びに来てくださいね」
「ギィィッ……」

苦しむゴブリンに背を向け、「また一つ善行を積むことができた」という満たされた想いと共にダンジョンの奥へと進もうとするリーサ。
と、数歩先にあった床板を踏んだ瞬間。突如として床全体を覆うように奇妙な紋様が浮かび上がった。

「えっ? な、なんですか!? どうして急に魔法の気配が……!?」

――それは今から数週間後、『トラップ』という俗称で知れ渡って冒険者の間で最も警戒されるようになる、ダンジョン内にいくつか仕込まれている特異な魔法陣の一種だった。
トラップの仕組みはとても単純で、ダンジョンにある特定の床板が踏まれた衝撃をスイッチにして貯蔵された魔力を解き放ち、そこに封じられた魔法を一度だけ発動するというもの。
――しかし、その存在が広まる前にダンジョンへ入ってしまったリーサは当然何の対策もしておらず、予想外の事態に狼狽する。
やがて魔法陣からは半透明の腕のようなものが2つ這い出ていき、かと思えばそれらはリーサに、そして身動きができないゴブリンにまで襲い掛かった。

「きゃあああぁぁぁっ!!? あ゛っ!!?あぐっ、うあぁっ……」
「グギィィィッ!!? ギッ、グギッ……」

半透明の腕が彼らの頭に突き刺さったかと思うと、同時に両者はびくびくと全身を痙攣させながら苦しそうに呻き声を上げ始める。その動きは次第に緩慢になり、ずぽんっ!とその腕が引き抜かれたかと思うと、その手には同じく半透明な『何か』が掴まれていた。

『……あら?私、どうなって……えっ!?』

一瞬の暗転の後、意識を取り戻したリーサは眼前に映し出された光景に驚愕する。宙を浮かぶ腕に掴まれ、地面と平行になっている視線の先。そこには虚ろな目を浮かべたまま仰向けに倒れているもう一人の『自分』の姿があったのだ。
慌てて周囲の状況を伺うと、その近くには同じく腕に捕らわれた半透明のゴブリンが……そしてその真下には、先ほどとは違い呻き声すら上げずに動かないでいるゴブリンの肉体が。
互いの魂を掴んだ腕はゆっくりと元の肉体から離れていき、どうやら別の方向へと向かっているようで――そんな状況を前にして、魔法への類稀な才覚を持つリーサは直感的に、その魔法陣が持つ効力に気付いた。気付いてしまった。

『これはまさか……魂を交換する魔法!? だ……だめっ!戻って、戻ってください!いやぁっ!!』

これから訪れるであろう最悪の事態が脳裏に過り、半狂乱になりながらバタバタと手足を動かし、なんとか元の身体に戻ろうとする。
しかし、既に何もかもが手遅れだった。リーサの必死さを嘲笑うかのように、無慈悲に、彼女の魂を掴んだ半透明の腕はゆっくりと近づいていく。その先にあるカラダ……魂という主を失って抜け殻となった、ゴブリンの肉体へと。

『ギッ……?ギッ、ギヒッ♡ギィィィッ♡♡』

絶望の最中にあるリーサとは対照的に、同じく魂だけの姿となったゴブリンは狂喜の咆哮を上げていた。彼は自身が魂になったことなど全く気づいておらず、意識を失ったリーサの肉体しか見えていなかったのだ。
気付けば自分を苦しめていた痛みはすっかりと消えていて、そして目の前には先ほど犯そうとし、それが叶わなかった極上の雌が無防備に横たわっている。まずは肉付きの良い乳房を堪能しようと手を伸ばし……「ずぷっ」と。触れた指先が溶けてしまったかのように沈んでいき、ゴブリンが驚く間もなくその頭部が、やがて上半身までずぶずぶと吸い込まれていく。

『そんな、私のカラダが……!私、の…………』

ゴブリンの魂が自分の肉体に入り込むという光景を前にして悲嘆に暮れるリーサだったが、気づけば彼女の魂も、その下半身の全てがゴブリンの小さな肉体へと収まってしまっている。その豊満な乳房も、すらりと伸びた滑らかな両腕までもが呆気なく吸い込まれていき。――トプン、とリーサの頭部が完全にゴブリンの肉体へと押し込められてしまった時点で、床に浮かび上がっていた魔法陣は役目を終えたかのようにその姿を消していた。



***



しばらくの静寂が続いた後。先に目を覚ましたのはリーサの方だった。
パチ、パチと何度か瞼を開閉させた彼女は突然ガバッと勢いよく身体を起こし、まるで警戒状態にある四足獣のような体勢でその手足を床につける。

「ギッ、グギャァッ!?」

その勢いでふわりと裏返ったヴェールにより突如として視界を塞がれたリーサは、驚きのあまり甲高くしゃがれた悲鳴を上げた。
訪れた暗闇に困惑したものの、少ししてそれが自身の頭に付けられている布地が原因だと理解し、苛立ちと共にヴェールを乱暴に脱ぎ捨てる。同時にそこへ押し込められていた艶やかな金色の髪が舞い上がり、再び視界を覆ったそれを邪魔だと言わんばかりに引っ張ったところ痛みが走ったため、鬱陶しさを感じる長い前髪を退かすことを諦めた彼女はしかめ面を浮かべると、今度はキョロキョロと周囲の状況を伺い始めた。

「ギィ…………」

ちらりと、床に転がって未だ目を覚まさないゴブリンを一瞥したかと思えば再び辺りを見回し、やがて落胆の息が漏れる。リーサの視界に、リーサの姿が映らなかったからだ。
しかし、彼女はリーサのことを諦めようとはしなかった。雄としての本能をこれ以上ないほどに刺激する極上の女体が忘れられなかったから。
やがて彼女の痕跡を、その身体から発せられていた雌のフェロモンの匂いを辿ろうとすんすんと鼻を鳴らし――そこでようやく彼女は気付くことができた。そのニオイがとても近くから発せられていることを。ほんの少し視線を下げたその先、黒いローブの下に、そのニオイを一際強く香らせている大きく柔らかな膨らみがあることを。

「グギャッ!?♡ギっ、ギィィィィィィッ♡♡」

彼女は端正な顔をこれ以上ないほどに歪めた笑みを浮かべると、狂乱の声を上げながら自身の乳房を揉みしだき始めた。細くしなやかな指全体をぎこちなさそうに動かし、黒い布地に包まれた豊満な胸を本能の赴くがままに蹂躙していく。
やがて彼女は肉感的な乳房をぶら下げた雌を相手にしていると錯覚し、ガバッと両股を開いたかと思えばヘコッヘコッとその腰を前後させていった。自らの性器を挿入し、その雌を確実に孕ませるために。
――当然彼女は性交になど及んでおらず、ただ自らの身体に欲情して自慰に耽っているだけであるのだが。今の彼女はそんなことにすら気付くことができないほどの知能しか持ち合わせていなかった。
暫くの間、リーサはふんふんと鼻息を荒げながらも乳房を弄ることに没頭していたのだが――

「グギィィィッ!!?♡♡ グギャっ、ア゛っ、あァァァ゛ぁああっ……!!?♡」

興奮によって固く隆起した乳首を偶然爪先が擦り上げた瞬間、リーサは「ビクンッ!」と身体を大きく振るわせたかと思うと動きを止め、呻き声を漏らす彼女の全身はぴくぴくと小刻みに痙攣し始めた。
戒律を守ってきたため、これまで自慰という行為を一度もしたことがなかった彼女の肉体にとって。そしてその新しい主となったゴブリンの魂にとって。その両者が初めて味わう、女体が もたらす強烈な快感に襲われたからだ。
突如として走った電流のような強い快感によって刺激され、それまでゴブリンの魂が使っていたせいで十全に稼働していなかった彼女の脳みそが強制的に目覚めさせられる。そしてそれは、彼女の脳がゴブリンの魂に初めて接続されてしまった瞬間でもあった。

「あっ、ア゛アぁぁッ!?♡ グぅ……グギャッ……ギっ……グギィィィィッ!!?」

図らずもリーサの肉体を自らのモノとするきっかけを手にしたが、そんな彼女は苦し気に頭を抱え始める。リーサの脳と繋がったことを皮切りに、ゴブリンの魂にはその記憶が、蓄積され続けてきた『リーサ』としての人生の全てがなだれ込んでいたのだ。
当然そのような膨大な情報を処理できる性能をゴブリンの魂が持っているはずもなく、本能のままに生きてきた自分とはまるで違うその全てに戸惑いと不安を覚え――

「ア゛ッ♡♡あぁぁっ♡♡♡♡ぎひっ、グヒぃぃぃっ♡♡♡♡」

それらを「どうでもいいことだ」と切り捨て、リーサは乳房への愛撫を再開する。何故か自分の身体が人間の雌になってしまったことも、突然頭に浮かぶようになった知らない記憶も。先刻味わった快楽に比べればどれも些事でしかなかったのだ。
偶然に乳首を刺激した時のことを思い出し、歪な笑みを浮かべた口の両端から涎を垂らしながら、ぷっくりと膨らんだ先端を絞るようにして指先でぐにぐにと捏ね回しては敏感な性感帯が伝えてくる快感を楽しみ、愉しみ続ける。純潔を守り続けていた彼女の脳みそはすっかりと女体の快楽に浸され、雄の性欲に犯され続け……そんなリーサに、少しずつ変化が起き始めていた。

「あっ♡♡あ゛あァァっ♡♡♡ カミ、よ……ギひぃっ♡♡♡キョうも、わたシたちがァ……ア゛ぁっ♡♡♡♡ たダしく……っ♡♡♡いきルすがタお゛ぉぉっ♡♡♡♡」

獣の鳴き声の様でしかなかったリーサの言葉。それが少しずつ、ぎこちなく喘ぎ混じりではあるものの、人語のような形を取り始めていたのだ。
それはリーサが毎日、物心がつく以前よりずっと続けてきた習慣である神への祈りであった。十数年間ずっと繰り返されていたために脳の表層にすっかり染みついたその言葉を、リーサの口は半ば無意識の内に紡いでいく。

「ミまもりっ♡♡♡おミチビキくダさいぃっ♡♡♡あんっ♡♡♡ このこんとンとした世界にっ♡♡ちつジョの光ヲっ……あぁぁあ゛っ♡♡♡」

一つ喘ぎ声を漏らす度に、その言葉が少しだけ流暢なものへと変わっていく。女体の快楽を喰らい、リーサの脳でそれを味わう度に自らを犯す手つきからぎこちなさが抜けていく。カラダが持つ本能を刺激する「自慰」という行為、そして彼女にとって最も馴染み深い「祈り」という行為を通じて、ゴブリンの魂は少しずつその肉体に、リーサという存在に馴染み始めていたのだ。

――そして、その祈りを幾度となく繰り返した存在はこの場にもう一人いた。
リーサの魔法によるダメージのせいかすっかり意識を失っていたが、ふと耳に入ってきた聞き覚えのある文節、そしてそれを紡いでいる聞き覚えのある声を耳にしてゆっくりと目を開ける。

「……アラ?私、イッタイ……ヒッ!? コ、コノ声ッ!!? マサカ、ソンナ……!!」

低くしゃがれた声で叫び、慌てて立ち上がろうとしたものの手足が固められてしまったように動かずパニックになりかける。かろうじて動いてくれた首だけを何とか持ち上げ……そうして視界に入ったリーサの姿を見て彼は思い出した。自分のモノだった『リーサ』の身体をゴブリンに奪われ、その代わりにゴブリンの身体へと押し込められてしまったことを。

「んン? ……ぁハっ♡♡私たチぃっ♡♡アワレな魂を……あんっ♡♡どうかっ♡お救い……んひっ♡♡あひぃぃっ♡♡♡」
「ナッ……イ、一体何ヲシテルンデスカ!?私ノ身体デッ!! ヤメテ!ヤメナサイ!!」

狼狽するゴブリンをちらりと横目に映すリーサだったが、すぐに興味を失ったようで視線を真下に向けると、再び乳首を責め立てる自慰に没頭していく。しかし、ゴブリンにとってその姿を見せつけられることは拷問に等しかった。
生まれた時から苦楽を共にしてきた身体が自身の意思を無視し、ゴブリンの魂の言いなりとなって動かされている。更には戒律で禁じられている淫行に耽り、その純潔を奪われつつあるという事態は彼にとって到底許容できるものではない。
そうして頭に血が上りきったゴブリンは感情のままに金切り声を上げ――普段の『リーサ』であれば間違いなく選ばなかったであろうその短絡的な行動は、結果として彼が取り得る内の最悪な選択となってしまった。

「……こら、いケませんよぉ? んぅっ♡大事なお祈りノ時間にっ♡♡おシャベりするのはぁ♡♡」
「ッ…………!?……、…………!!?」

耳障りな騒音を「黙らせたい」と。そう思ったゴブリンの魂に従い、リーサの肉体はそれを実現するための言葉と手段を思い出す ・・・・
それは、週に1度村人が教会に集まる祈りの時間に起きた出来事。その日初めて教会にやってきた小さな子供達がこそこそと談笑する姿を微笑ましく思いつつ、軽い躾のためにとある魔法を施したのだ。――祈りが終わるまでの数分間、声を発することを禁じるという沈黙の魔法を。

「ふふっ♡ ちゃんといい子にしていれば解いてアげますからね♡」
(ど、どうなってるんですか!?まるで本物の私みたいに話して、それに魔法まで……はっ! そ、そうです!身体が動かせなくても、簡単な魔法で動きを止めることぐらいなら……あ、あれっ?)

今まさに自身の身体を縛っているものと同じ魔法でもってリーサを止めようと試みるが、上手くいかない。魔力の存在は自身の中に感じられるのだが、それを扱うためにこれまで無意識に使っていた『何か』がぽっかりと欠けている喪失感を覚える。

魔力は魂に宿り、魂が持つ意思の力によって初めて魔法という形で発露される……と。独学で魔法を会得したリーサは魔術書に書かれていた理論を信じていたが、その記述は正確ではなかった。
正しくは、魂の住処となってその意思を物理的な信号へと変換することで身体を動かす器官である『脳』。その中に在る、魔力を放出するための特殊な部位を介して魔法は発動するのだ。
しかし、知能が低く脳が未発達な生物――例えばゴブリンのような魔物には、そもそも魔法を扱うための機構が備わっていなかった。

(な、なんでっ!?どうして!?)

そんなことを知る由も無いゴブリンはその身に余るほどの膨大な魔力を何とか使おうと繰り返し試すが、そのどれもが徒労に終わって焦燥感ばかりが募っていく。

「ふふっ……あはははははっ! すごいっ、これが私の、リーサの記憶……あぁっ♡」

一方でリーサの肉体は、その脳に宿るゴブリンの魂に操られて歓喜の声を上げていた。
ゴブリンを黙らせるという明確な目的をもって、以前の出来事を思い出した感覚。本能のみで生きる魔物が初めて体験した、「思い出す」という感覚。それを知ったゴブリンの魂は更なる快楽を堪能するために、リーサの脳から彼女が生きてきた証である記憶の数々を吸い上げていたのだ。
今まで使っていたそれより圧倒的に優れた脳を自らの意思で使う感覚はそれ自体が甘美な響きを持ち、自慰とはまた異なるその快感に恍惚の吐息を漏らす。

「……へえ?なるほど、人間の雌はそんなやり方もできるんですね。 ああ、神に仕える身でありながらこのように淫らなことをしてしまうなんて……♡」

そうして「もっと気持ちよくなりたい」という意思によって思い出したのは、戒律によって禁じられている自慰行為の存在だった。書物で読んで知ったその存在を、以前性欲を抑えられず困っていると懺悔室にやって来た村の女性から聞いた話を繋ぎ合わせることで、リーサの優秀な頭脳は自らの身体を使ってそれを実現させる方法を組み上げていく。
身を包むローブの下に手を潜り込ませ、乳房への愛撫によりすっかりと濡れそぼった秘裂にそっと宛がう。そのまま指先を膣内へと挿入し――すんでのところで、彼女の右手は躊躇するかのようにピタリと動きを止めた。

「あら、戸惑っているんですか? まあ、仕方ないですよね。こんなにも罪深い行為は今までしたことなんてありませんでしたから。 でも……ふあぁぁっ!?♡♡」

左手で乳首をぐにぃっ♡と捻り上げ、度重なる愛撫で敏感になっていたそこから与えられる快感によって透き通った嬌声が鳴り響く。躊躇するリーサの肉体を無理矢理屈服させるようにして、彼女の指先は再び彼女のカラダを犯し始めていった。
リーサの脳に巣食い、彼女自身の人格を操り。ゴブリンの魂はそのカラダが秘めている更なる快楽を貪るために、彼女の意志と精神を無理矢理に捻じ曲げていく。

「あはぁっ♡♡♡ ほら、ゴブリン様の言う通りにすれば……あっ♡あぁぁんっ♡♡♡こんなにっ♡♡気持ちよくなれるんですからぁ♡♡ 鬱陶しい戒律なんて全部忘れてっ♡♡今はただ、ゴブリン様のお導きのままに……♡♡」

そして遂に。リーサの肉体はあろうことか、自らに侵入したゴブリンの魂こそが信ずるべき主であると認めさせられてしまったのだ。
神に対する絶対的な信仰が。正しく在るために遵守するべきとしていた戒律を信ずる心が。その行く先を強引に捻じ曲げられ、その全てが彼女を乗っ取ったゴブリンの魂に向けての崇拝へと変えられていく。
もはや淫行を縛る枷は何処にも無くなってしまい――彼女が信ずる『主』へ快楽という供物を捧げる為に、今度は一思いに自身の指先を膣内へと差し込んでいった。

「ひあぁぁぁっ!!?♡♡♡♡ ……くふっ、くひひひっ♡♡ 知りませんでした……♡私の、女性のカラダがこんなにも気持ちよくなれるものだったなんて……あぁぁんっ♡♡ もっと、もっとくださいっ♡♡♡ゴブリン様の、我が主のその手でっ♡♡もっと、もっとぉ♡♡♡♡」

至上の快楽を伝えてくる肉壺を自らの手でぐちゅぐちゅと搔き回し、犯し、犯し尽くし。とめどなく溢れてくる女体の悦びに晒され続けたリーサの脳は既に、ゴブリンの魂への完全なる屈服を果たしていた。
禁欲によって長い間抑圧され続けていたカラダへと与えられた、何もかもを凌駕するほどに強烈な女体の快楽。自らのカラダでそれを味わうごとに、ゴブリンの魂によって齎される至上の快楽を受け入れるごとに。彼女の肉体はますます新たな主を気に入ってしまい、甘えたような声でその先を、更なる快感をねだり続ける。
べっとりと脳内にこべりついた麻薬のような快楽によって彼女の脳髄はあっという間に蝕まれていき――その全てが徹底的に欲の色へと染まりきってしまったその瞬間、『リーサ』の終わりを告げる刻が訪れる。

「はぁぁああぁぁぁっ♡♡♡いやあっ♡♡やだ!たすっ、助けてぇっ♡♡ わたしっ♡♡乗っ取られちゃう!♡♡♡♡ 魔物のっ♡♡ゴブリン様の下僕にされちゃっ…………あ゛っ!!?♡♡♡♡いやあぁぁぁあああっっっ♡♡♡♡♡♡」

それは、彼女がそれまでの『リーサ』として発した最後の悲鳴だった。かつてその身体の主人であった女性の残留意識が、その肉体がゴブリンの魂に支配されてしまうという異常事態を前にして、『自分』を保つために『リーサ』の魂へと悲痛な助けを求めたのだ。
――しかし、いまや彼女の肉体にはゴブリンの魂しか残されていない。本来リーサの身体を動かしていた魂は、床に這いつくばることしかできない無様なゴブリンの肉体へと押し込まれてしまっているのだから。
彼女の肉体が発した哀願の悲鳴は無意味に響き渡り……遂にはその残留意識すらも、その肉体を支配する絶頂の快楽によってゴブリンの魂への忠誠を誓わせられてしまっていた。

「はーっ、はーっ……♡ ……ふふっ、あはははははっ!♡♡♡♡ これが本当の私!これが、今までの愚かな私が無視してきた快感……!♡♡ 嗚呼、どうかしていました♡こんなにも素晴らしい啓示を与えて下さるゴブリン様を裏切ろうとしていたなんて……♡♡」

もはやリーサの肉体は完全にゴブリンの魂の虜となり、本来の魂を「愚か」だと吐き捨てるほどに新しい主への忠誠を強めていく。
ゴブリンの魂はリーサの肉体が齎す女体の快楽を求め、リーサの肉体はゴブリンの魂から与えられる至上の肉欲を求め……。そんな互いの欲望を満たすために、リーサの肉体は更なる変容を遂げようとしていた。

「……ええ、仰る通りですっ♡♡私もこの淫乱な雌のカラダがとっても気に入りました♡♡ これからもずーっと、このリーサのカラダを使って……いいえ、使わせて差し上げますね♡♡ そのためにはぁ…………ひぎぃっ!!?あ゛っ!!♡♡ア゛ぁああっ……!?♡♡」

びくんっ!!と、全身を大きく震わせたかと思えば、リーサは両手で頭を抑えながらガクガクと痙攣し始める。尋常ではない様子で濁った呻き声を漏らす彼女は苦しんでいるのかと思えばそうではないらしく、その表情はだらしなく歪み、女性器からはとめどなく愛液が分泌されていく。彼女の全身を襲っているのは苦しみなどではない、ゴブリンの魂に支配されることによる悦びだった。

「ぐぎっ!!?♡♡ぐっ……ぎひっ♡♡♡アはははぁっ♡♡ ええ、そうですっ♡♡来てくださいっ♡♡『俺』の意思も欲望も何もかも全部、私のナカに……あぁぁあっ♡♡♡♡」

快楽に打ち震えるリーサの脳内で行われているのは、『新たな人格』の構築だった。
リーサの肉体を支配したゴブリンの魂ではあったが、現状はただ彼女の脳を操り、その繋がりを通して人格を掌握しているだけに過ぎない。
もちろんその状態のままでもゴブリンの魂が持つ欲望を満たすには十分ではあったのだが……他でもない『リーサ』がそれ以上の快楽を、更に奥深くまで支配される悦びを求めてしまったのだ。
リーサが培ってきた記憶を総動員し、彼女の脳は『男』としての新しい人格を構築し続ける。雄であるゴブリンの魂にそれを使ってもらうために。ゴブリンのためだけに造られた空っぽの人格を乗っ取ってもらい、自らの肉体へと定着してもらうために。

「あ゛っ♡♡♡あひっ……ヒヒヒヒッ♡♡♡ すげえ、これが私の……いや、俺のカラダぁっ♡♡ そうか、俺の新しいチンコはこんな風に感じるんだなぁ♡♡」

再び股間へとその手を向かわせた彼女は、硬く隆起したクリトリスを力強く捏ね回しながら歓喜の声を上げる。
以前村を訪れた、聖職者である自分をしつこく口説き続けてきた下卑た男の口調で。魔法を使って仲裁してほしいと頼まれた時に目にした、酒場で飲んだくれている男の粗野な仕草で。人が居ない場所で仕事をしていた時に襲われそうになって返り討ちにした、今は都市の牢獄に収監されている男の性欲で。小さな村で暮らしてきた経験しかないリーサの脳内に存在する数少ない『男』の記憶によって、その人格は形作られていた。
それらはかつてのリーサが不浄として軽蔑していたものであったが……そうして用意された人格はどうやらゴブリンの魂にとって使い心地の良いモノだったらしく、ますますその肉体を気に入ったゴブリンの魂は彼専用の人格を介して更に奥深くまで根を張ってしまう。

「くくっ、ははははははっ!♡♡♡気に入ったぜ!♡♡ これからはお前をっ♡♡俺が使うためだけの専属ボディにしてやる!!♡♡♡♡ ぁはっ♡♡嬉しい、素敵ですっ♡♡ これからはこのデカ乳もっ♡♡♡♡馬鹿みてえに疼くこのドスケベマンコも全部全部、俺のっ、ゴブリン様の…………ひい゛っ!!!?♡♡♡♡♡♡あ゛っ♡♡♡♡あぁぁあぁぁぁっ……♡♡♡♡♡♡」

淫核から走った電流のような鋭い快感がずぐんっ♡♡と脊椎を通り抜け、痺れるほどに強烈な快楽の奔流が脳を襲い、焦がしていく。男と女の2つの人格を宿すリーサの肉体から発せられた、性別すら超越した途方もない絶頂の悦楽。その肉体の新たな支配者となったゴブリンの魂は完全にリーサの脳へと溶け込み、混ざり合い――
雄の魂と、雌の肉体。本来噛み合うことが無かったはずの両者が交わうことによる絶頂を体験した『リーサ』は、もはや以前の持ち主の魂が入り込む余地など無いほどに不可逆な融合を果たしていた。

「ふーっ♡ふーっ♡ ふぅぅぅっ…………♡ くひっ♡ひひひひっ♡♡ ありがとよ、リーサ。これから一生、お前は俺専用の肉奴隷 カラダだ……♡♡」

リーサはゆっくりと息を整えると、恍惚とした表情を浮かべたままぎゅうっと自分自身を抱きしめる。ゴブリンの人格によって取らされたその行動に、ゴブリンの人格が発したその言葉に。彼女のカラダはぞくぞくとした疼きと甘い快楽を分泌する。新たなる主に絶対の忠誠を誓わされた彼女の肉体はもはや、その魂に支配されていることを実感するだけでどうしようもないほどに発情してしまう敬虔な淫女へと造り替えられてしまっていたのだ。

「ああ、そうだ。一応お前にも礼を言っておくべきかもなあ? 最っ高のカラダを譲り渡してくれてありがとな、元・リーサちゃん♡」
「アッ……アァァ……。 ソンナ、コンナノ嘘デス……。私ノ、私ノ身体ガ…………」

パチンッとリーサが指を鳴らした直後、沈黙の魔法を掛けられていたゴブリンがようやく言葉を発し始める。
かつて自分だったリーサの肉体を操られ、乗っ取られ、使いこなされ。そんな光景を身動きができない状態で見せられ続けていたゴブリンは底知れぬ絶望に打ちひしがれていた。

「コンナ……コンナ非道ナコトナンテ在ッテイイハズガアリマセン……。 オ、オ願イデス!ソノ身体ヲ、私ノ身体ヲ返シテクダサイ!」
「はあ?何を愚かなことを言っているんですか?ゴブリン様の御意思に背いてまで、貴方如きに私のカラダを使わせるわけないじゃないですか」

涙目になりながら必死に懇願するゴブリンを前に、リーサの肉体はその主人よりも先に苛立った態度を露わにする。ゴブリンの魂によって快楽漬けにされたリーサの肉体は、彼女が持つ強い性欲を抑圧し続けていたかつての主である魂に嫌悪感すら抱いているようだった。

「……と、お前 リーサはそんな風に思ってるみたいだぜ?当然俺もこんな良いカラダを手放す気なんて無いしなぁ……くひひっ♡ま、潔く諦めるこった」
「ッ……私ノ真似ヲシテ、ソンナコト言ワナイデクダサイ!!」
「別に真似って訳でもないんだが……理解力皆無の小っせえ脳ミソしかないゴブリン如きに説明してやる義理も無いか」

リーサは呆れたように溜め息をつくと、脱ぎ落としていたヴェールを拾って再び頭に身に着ける。乱れた髪や衣服を丁寧な所作で整えているその姿は普段のリーサ・クレシュタインそのもので、その内にゴブリンの魂が宿っているなどとは誰も気付くことはないだろう。

(よかった、油断してくれてる……。 あと少し、もう少しで……!)

そんな中、床に伏しているゴブリンはとある企みを実行に移そうとしていた。ずりっ、ずりっ、と手足が動かない身体を引き摺るように動かし、蓑虫のような速度ではあるものの少しずつ地べたを這いつくばっていく。
その先にあるのは、リーサが数刻前に踏んだトラップである床板だった。ゴブリンは自分達を入れ替えた魔法陣を再び起動させることで、『リーサ』の身体を取り戻そうとしているのだ。
あと少し、もう一息というところまで彼の全身は近づいていき――

「……で。さっきから何をコソコソと企んでんのかなぁ、ゴブリンちゃん?」
「ヒッ……!?」

ジロリと。床を這いずるゴブリンをリーサが一瞥した瞬間、彼の動きが完全に硬直する。自身の思惑がバレたことへの焦り……それもあるのだが、彼女が視線を向けると同時に行使した魔法によって、辛うじて使うことを許されていた胴体の動きすらも封じられてしまったのだ。

「こっから這いずって逃げようとしてた……いや、流石にそれが成功すると思うほどには馬鹿じゃねえか。 となると……ああ、なるほどな。もしかしてさっきの床板を踏もうとしてたのか?」
「ッ…………!」
「図星みたいだな。 はははっ!よく考えた、というかよく床板の位置を覚えられてたもんだぜ。そのちっぽけな脳ミソでよお。 確か、これがそうだっけか?」
「エッ!?」

リーサはゴブリンを見下してニヤリと嗤ったかと思うと、なんとトラップのスイッチである床板を、ゴブリンが必死に辿り着こうとしていたそれをあっさりと踏み押してしまった。
そんなリーサの行動を前にして、ゴブリンは当惑する。そのトラップは彼らの魂を交換したもので、それが再び発動すればリーサの魂は元の肉体を取り戻すことができるはずなのだから。しかし――

「ア……アラッ? 確カニソノ場所ダッタハズ……。ド、ドウシテ魔法ガ発動シナインデスカ!?」

数秒、数十秒と。どれだけ待とうが先ほど起きた現象が訪れる気配は無い。予想外の事態に慌てふためくゴブリンを見下しつつ、リーサは心底愉しげな様子で口を開いた。

「くはははっ!おいおい、まさかとは思ったが……マジで解ってなかったのかよ! お前も元はリーサだったってのに、ほんと、肉体のスペック差ってのは残酷なもんだよなぁ?」
「ア、アナタハ何カ知ッテイルンデスカ!?教エテッ、教エテクダサイッ!」

もはや恥も外聞もなく。今起きている事態を全く理解できていないゴブリンは必死になってその原因をリーサに問いかける。

――魂とは生物が持つ脳に宿り、その性能をもって思考や行動を行うものである。リーサの脳を手に入れたゴブリンの魂が彼女の優秀な思考回路を手にしたように、ゴブリンの脳へと押し込められたリーサの魂もまた、少しずつその肉体に影響されてかつての性能を保てなくなっていたのだ。

当惑するゴブリンを見てニタァと唇を歪めながら、リーサは幼子に教えを説く時のようなゆっくりと落ち着いた語調で言葉を続けた。

「んー、そうだな。あくまで状況証拠による推測だが、あれは恐らく物理的な衝撃をトリガーにして、そこに蓄えられていた魔力を解放することで魔法陣を起動する仕組みの罠のような物だったんだろうよ。 んで、さっき発動した影響で貯蔵魔力は既に空っぽ。それに加えて魔法陣自体も1度の使用で消滅する造りだったみたいで――」
「エ……エッ?ア、アノッ……?一体ドウイウ……」
「ああ、頭空っぽのゴブリンちゃんにはちょーっと難しかったかもなあ? くひひっ♡それじゃあ、お前にも理解できるように簡単に説明してやるよ。 つまり、さっき発動した魔法は1回きりの使い捨てだったってこと。……もう分かったろ?お前と俺がまた入れ替わることは二度と無いんだよ♡」
「使イ、捨テ……。二度ト…………?」

ようやくリーサの言葉を理解したゴブリンは、目を丸くして彼女を見つめながら言われたことを反芻する。
入れ替わりが再び起きることは無い……つまり、自分はこのゴブリンの身体のままで生きていくしかないということになる。
かつての『自分』とは比べ物にならない異様な体色をした貧相なゴブリンの肉体を見下ろして、そんな自身を愉快そうに見下ろしているかつての『自分』の嗜虐的な表情を視界に映して。
そしてようやく。その『現実』をようやく認識したゴブリンは、ギョロっとした瞳から大粒の涙を流し始めた。

「イヤ…………嫌ァッ……!」
「ひひっ♡悪い悪い、泣かせるつもりはなかったんだよ。代わりに良いモン見せてやるから機嫌直してくれよなぁ。 ……ほら、ゴブリンちゃんが見たかったのは多分こんな魔法だろ?」
「エ……!?」

ニヤリと嗤うリーサが手をかざした瞬間、何もなかった空間に突如として魔力が収束し、『何か』を形作っていく。
――そうしてそこに現れたのは、一本の半透明な腕。先ほどトラップによって生じた未知の現象を、リーサはなんと自らの意思で再現してみせたのだ。
驚いたゴブリンが悲鳴を上げる間も無くその腕は彼の頭部へと突き刺さり、ごそごそとその内部を掻き回していく。その間もゴブリンは苦しそうな呻き声を漏らし続けていたが……やがてずぽんっ!と腕が引き抜かれたかと思うと、その手には半透明のリーサが掴まれていた。

『これは……まさか、また魂の姿に!?ど、どうなっているんですか!?』
「おいおい、俺と同じ姿でそんな喚くなって、みっともねえ。 見れば分かるだろ?あの魔法陣の効果を再現して、お前の魂だけを引き抜いたんだよ」
『そんな……!?』

事も無げに言ってのけたリーサを前に、リーサの魂はひどく狼狽する。
初めて見た魔法の再現……それ自体は、以前のリーサもすることができていた。どれだけ複雑な魔法だとしてもその根源となる魔力は同じであり、優れた能力を持つ彼女の手にかかれば、それらを解析して再現することなど造作もないことだったのだ。
だが、魔法によって引き起こされる現象が複雑であればあるほどにその難易度は上昇していく。魂を引き抜くなどといった魔法はそもそも原理すらも未知の代物であるため、万全であったとしても再現に数時間はかかるだろう。
しかし、リーサの身体を乗っ取ったゴブリンはそれを一目見ただけで再現してみせたのだ。それが意味することは――

『あっ、あり得ません!ただのゴブリンがそのように高度な芸当なんて……!』
「だから、今はお前がゴブリンでリーサは俺なんだっての。 お前が持ってた記憶も、知識も技術も能力も、何もかもが俺のものになってんだ。 もう俺は元のお前と同じ……いや、くだらねぇ戒律や倫理観なんかに縛られてたお前なんかよりも、ずっとこのカラダ リーサを使いこなしてるんだよ」
『っ……そ、そんなはずは…………』

なんとか否定しようと声を絞り出そうとも、彼女はそれ以上何も言えなかった。その言葉が真実だということを、他でもない彼女自身が痛感してしまっていたのだ。
リーサの能力が飛躍的に向上した原因は、皮肉にもゴブリンの魂に操られていることにあった。通常、脳は負荷を軽減するため無意識に本来の能力を制限しているのだが、今のリーサの脳はそこに宿るゴブリンの魂の飽くなき欲望を叶えるために、その内に宿る潜在能力まで引き出すに至っていたのだ。
今のリーサにその理由は分かっていないが、明らかに以前 ・・よりも自在に魔法を扱えるようになったことは理解し、体感できていた。圧倒的優位に立っている余裕でニマニマと唇を歪めながら、かつての主であった魂に嘲るような視線を向ける。

「ざまぁねえな、元リーサちゃん♡ 察するに、ゴブリンのカラダでも魂の状態でも魔法が使えねえんだろ?くははっ、もう打つ手は無いって訳だ」
『…………殺して、ください……』
「あ?」
『これ以上……これ以上、私が神に背く行為をさせられている姿を見せられ続けるなんて、耐えられません……。お願いだから、殺して……せめて神の元へ逝かせてください…………』

肉体から引き離され、魂だけの状態のリーサは涙を瞳に滲ませながら震える声でそう懇願する。魔物に身体を奪い取られ、自身の姿で戒律を破られ続け、自分の物だった手で純潔すら散らされて……そんな折に突きつけられた「元に戻れない」という事実は、既に限界寸前だった彼女の精神にとどめを刺すには十分だった。
――しかし、彼女が懇願している相手は神でも悪魔でもない、魔物の魂を宿した人間である。そんな『リーサ』が『ゴブリン』の願いを聞き入れようとするはずもなく、彼女はただただ欲望のままに、リーサの魂からも全てを奪うために、戯れに思いついた魔法を行使していく。

「んな罰当たりなこと言うなって。神サマから賜ったありがた~い命だぜ?軽々しく捨てちゃいけねえよ。 ……くひっ♡せっかくなんだから、もっと有効に使ってやらねえとなあ?」
『い、一体何を……ぐぎぃっ!!? あ゛っ、あ゛あぁぁぁぁア゛アッ!!!?』

リーサが邪悪な笑みを浮かべた瞬間、半透明の腕に捕まれていたリーサの魂が苦しそうな声を上げたかと思えば、その全身が青白い光で包まれ、やがて光は胸元へと収束していく。丸い球状へと成形されたそれはリーサの魂から引き剥がされると、今度はその下へと移動していった。……彼女の魂が宿っていたカラダ、ゴブリンの肉体へと。
続いてその光はゴブリンの股間、睾丸へと引き寄せられ、吸い込まれていく。同時にゴブリンの肉体は「ビクンッ」と全身を震わせたかと思うと、やがて彼の持つ男性器は意識が無いにもかかわらずムクムクとその大きさを増大させていった。

「ひひっ、上手くいったみたいだな。この大きさなら十分満足できそうだぜ……♡」
『はぁっ、はぁっ……!? な、何をしたんですか!?私に、何を……!?』
「なに、簡単なことだ。お前の魂が持ってた魔力を全部精力に還元して、そのままお前のチンコに宿してやったんだよ」
『へ……?ま、魔力を……?』
「魔法が使えないお前が魔力を持ってたって、宝の持ち腐れだろ?なら、俺が丸ごと全部もらってやろうと思ったんだよ。 ……ま、本命はコッチなんだけどなぁ♡」

リーサは修道服に隠れたショーツをするっと引き抜くと、ビクビクと震えるゴブリンの肉棒を愛おしそうに撫で回す。ペロリと舌なめずりをする彼女の陰部は太腿まで伝うほどに愛液が滴っており、既に彼女の脳内が色欲で染め上げられていることは明らかだった。

「前に村の女から聞いた話じゃ、セックスは自慰よりもキモチイイらしいからな。 早くそれを知りたい、ヤりたいって……リーサ のカラダがさっきからずっと強請 ねだり続けてて、もう我慢が利きそうにねえんだよ♡♡」
『まさか……や、やだっ!やめてください!! これ以上私を穢さないでぇっ!!』
「そう喚くなって。 ま、俺は慈悲深ーいシスター様だからな。 くひっ♡心配しなくても、最期くらいはお前にもイイ思いをさせてやるよ♡」
『ひっ……!? う、嘘……いや、嫌あぁっ!またゴブリンの身体になんて――グギャアァッ!!?」

リーサが軽く手を下ろすのと同時に彼女と同じ姿をした魂が引き降ろされ――それがゴブリンの肉体に吸い込まれた瞬間、ゴブリンは息を吹き返したかのようにその全身を痙攣させたかと思うとしゃがれた雄叫びを上げる。
一度その身体に入っていた影響か、先ほどとは違い拒絶反応も無く意識を保ったままではあるようなのだが、その様子は明らかにおかしいものとなっていた。

「身体ガ、熱イッ……!?♡ フーッ、フーッ♡♡ナ、何ナノデスカ!?コノ抑エキレナイ衝動ハァッ!!?♡♡ ギィッ……♡♡サ、先ホドマデハコンナコト……ッ♡♡」

身体を取り戻すためになんとか平静を保とうと努めていた先刻の様相からは打って変わって、今のゴブリンは耐え難い熱と疼きに苛まれ、口の端からダラダラと唾液を滴らせるほどの興奮具合を見せている。
彼がこうなってしまった原因は、リーサが行使した魔法にあった。リーサの魂が保持していた膨大な魔力を精力として男性器に注ぎ込まれたゴブリンの肉体は、通常の発情期すら軽く凌駕するほどの興奮状態に陥らされてしまっていたのだ。
加えて、彼の内に宿る魂……リーサの魂から魔力が失われてしまったことも要因の一つである。知能の低い魔物であるゴブリンの肉体に押し込められてもなお、彼が人語を扱える程度の知能を維持することができていたのは、その魂に宿る魔力が肉体による侵食を低減していることにあった。――しかし、今の彼女の魂は一滴すら残らないまでに魔力を搾り取られてしまっている。無防備になった魂を『自分』へと染め上げるべく、ゴブリンの肉体は新しく宿った魂への侵食を急速に進めていたのだ。
そんな異様とも言える状態を晒しているゴブリンを、リーサは好奇心に満ちた瞳で見下ろしていた。

「ふーん?中々に興味深いな。 恐らく魂から魔力を抽出したことに起因しているんだろうが……もしかすると、魔力自体に精神耐性のような効果が備わっているのか?それとも――」
「アッ、アナタガッ!!マタ、アナタガ何カシタノデショウ!? ソノ雌ノカラダハ私ノ物ダッタノニ……早ク私ノカラダヲ返シナサイッ!!返セェッ!!」
「……ま、細かいことは後でゆっくりと検証すればいいか。それよりも今は……ほらよっ♡」
「返ッ……ア、アァァ…………ッ!?♡♡」

リーサがローブの裾を捲って下半身を露出させた途端に、それまでうるさく喚き散らしていたゴブリンは嘘のように大人しくなっていった。その視線は露わになった女性器へと釘付けになっており、はぁはぁと息を荒くする彼の瞳は明らかに性欲の色で染まっている。

「どーだ、綺麗だろぉ?シスターリーサのまだ誰にも使わせたことのない処女マンコは♡ 今からココに、お前のそのいきり勃ったチンコをぶち込ませてやるんだ。感謝しろよ?」
「ハァッ、ハァッ……♡♡ ヤ、ヤメナサイッ♡♡グギッ……♡ワ、ワタシノマンコデ淫ラナ真似ヲ……グギィッ♡♡マンコッ♡♡リーサノォッ♡♡♡」
「ははっ、もう何言ってるか分かったもんじゃねえな♡」

生娘ながら既に発情しきっているリーサの女性器から漂うフェロモンによって、ゴブリンの肉体はより深い興奮状態へと陥っていた。そうして雌を孕ませるという身体の本能が脳を支配していき、不要な ・・・理性はリーサの魂の意思ごと握り潰されていく。
そんなゴブリンの姿をケタケタと嘲笑いながらリーサはゆっくりと腰を下ろすと、濡れそぼった秘裂をゴブリンの肉棒の先端に宛がっていった。

「くひひひっ♡指だけであんなに良かったんだ、こんなデケェ棒なんて挿れたらどうなっちまうんだろうなァ……♡♡」
「ギヒィッ♡♡♡マンコッ♡♡イレ……ル……? ダ、ダメッ!ヤメテェ! ソンナコトヲサレタラ、私ハ…………ギィイ゛ィィッ!!?♡♡♡♡」

一瞬躊躇する様子を見せたゴブリンを無視して、リーサは肉棒を根元まで一息に咥え込んだ。ぶちぶちと膜の破れる音が聞こえるのと同時に彼女は一瞬眉根をひそめたが、直ぐに破瓜による痛みを回復魔法で癒すと、やがてその表情は喜悦一色に染まっていく。

「っ……♡♡あぁっ♡♡♡♡ んだこれっ、すげえ♡♡♡♡ 熱いモンが奥まで擦れて……あっ♡♡ぁぁあんっ♡♡♡♡」

先ほどとは比べものにならないほどの快感がリーサの膣を満たし、それだけで彼女のカラダは軽い絶頂を迎えていた。その衝撃で一瞬視界が眩んだものの、たったそれだけで満足できるわけないと言わんばかりに肉体が意識をつなぎ留める。
その一回の抽挿によってある程度の加減を掴んだリーサは、今度はゆっくりと、それでいて確実に快感が得られる腰使いで上下に動き始めていった。

「んぁっ♡♡ひゃぁぁんっ♡♡♡ これが女のセックスっ♡♡これがっ♡♡元のリーサ じゃ絶対に味わえなかった快感っ♡♡♡♡♡ くひひっ♡♡ほんと、クソみたいな戒律だよなぁ♡♡こんな善いことを禁じてるなんて……お前もそう思うだろ?♡」
「ヒイ゛ィッ!?♡♡キ、キモヂイッ……オ゛ォォォ゛オォッ!!?♡♡♡♡ ヤ、ヤメッ♡♡♡ウゴカナイデクダサ……グギッ♡♡ギヒィッ♡♡♡♡」

一方、されるがままになっているゴブリンの側も、彼自身が初めて味わう途方もない快楽によってただひたすらに醜い嬌声を上げ続けることしかできないでいた。つい先ほどまで犯そうと、孕ませようとしていた魅惑的な女体と繋がっているという事実に、そしてその肉体に宿る魂が初めて味わう性的な快楽に、それらを無理矢理に与えられたリーサの純潔な魂は耐えられなかったのだ。
自らの肉棒が柔らかいヒダに絡めとられる度に、初めて体験する魅惑的な快感の虜になってしまう。腰を打ちつける振動に合わせてローブの下でふるふると揺れる乳房を見て、ゴブリンの肉体はよりいっそう生殖本能を刺激され、リーサの魂もまたその本能に染め上げられてしまう。
既に許容量をとうに超えた精液を睾丸へと詰め込まれていたゴブリンの肉体は、リーサという極上の雌を相手にした性交によってもはや限界を迎えようとしていた。

「ホオ゛オ゛ォッ!? 出ッ、出リュッ!?♡♡♡ 私ノチンコカラッ♡♡♡何カガァッ♡♡♡♡」
「ははっ♡♡いいぜ、さっさと射精しちまえよ♡♡ ……ま、出来たらの話だけどなァ?」
「――グギィッ!!?♡♡♡♡ ナ、何デ……出ルッ♡♡♡ダシタイッ♡♡♡♡ ナノニ……ギィィィッ!!?」

訪れた射精衝動を前にして咆哮を上げるゴブリンだったが、溢れ出そうになっていた精液は彼が持つ欲求に反して尿道の手前で押し留められてしまう。――リーサが戯れに使った魔法によって、肉体が持つ『射精をする』という機能を無理矢理に制限されてしまった結果だった。

「確か『婚前の性行為は許されざる行い』、なんて戒律にはあったよなぁ? リーサちゃんが嫌がると思って射精できないようにしてやったぜ♡ 有難く思えよ?」
「フ、フザケナイデクダサイ!! 私ノッ!!ワタシノマンコナノニィッ!!! 早ク……ハヤクシャセイサセナサイッ!!♡サセッ…………~~~ッ!!?♡♡」
「だからうるせえっての。 お前はただチンポを勃たせて……んっ♡♡ずっとっ♡♡俺を愉しませるための玩具として使われてりゃいいんだよぉっ♡♡♡♡」

欲望にまみれた騒音を発し続けるゴブリンに苛立ったリーサは、再び彼の肉体から声を出す機能を奪う魔法を行使する。先刻と同様に言葉を奪われてしまったゴブリンだったが……その顔にはもはや絶望などは見られず、ただただ射精をしたいという醜い欲望だけが浮かんでいた。
そんなゴブリンを見下ろしながら、リーサはただひたすらに性交が齎す快楽を、欲求不満が蓄積され続けていた女体による快感をひたすらに貪っていく。

「っ……ふあぁぁぁっ♡♡♡イぐっ♡♡♡♡イっちゃうぅっッ♡♡♡♡あぁぁああっ♡♡♡♡」
「~~~……、~~~~~~ッ!!!!♡♡」
「んっ……♡♡くふっ、くひひひっ♡♡♡ 苦しいですか?苦しいですよね?とめどない性欲を抑圧され続けるのは♡♡ でも……すぐ楽になんてしてあげません♡ 私が味わってきた苦しみも、あなた リーサがずっと私に課してきた無価値な戒律もっ♡♡ その全てをとことん後悔させたうえで、私だった貴女から全てを奪い盗って差し上げますね……♡♡♡♡」

リーサは端正な顔にニタァーッと邪な笑みを浮かべながら、自らの女性器から伝わる絶頂の快楽を再び味わおうと無遠慮に腰を上下させ続ける。
雌であればどのような生物であろうと孕ませようとするはずのゴブリンが射精を禁じられ、純潔を守るべきとされるシスターはそんな魔物を使って一心不乱に交尾の快楽を貪り続ける。常識も道理も無視した異常な淫行は、誰も止める者が居ないダンジョンの中で続けられていった。



***



「――ぁぁああっ♡♡またイクッ♡♡♡♡ っ……けほっ、はぁっ♡♡はぁっ…………♡♡ マジで際限無しだな、どんだけイけるんだよ俺のカラダは……♡」

絶頂に達し、限界が来たと思えば魔法によって体力を回復させて再び交尾に没頭し……そんなことを繰り返し続けて一時間ほど経過した頃、リーサはようやく一度 ひとたびの小休止を迎えていた。

「正直なところまだまだイキ足りないんだが……そろそろ魔力も尽きそうだし終わらせるとするか。 ……くくっ、お前もとっくに限界みたいだしなぁ?」
「…………っ!!♡♡♡♡」

顔を紅潮させながらも余裕の笑みすら浮かべているリーサとは対照的に、射精を禁じられ続けていたゴブリンはもはや見るに堪えない有様へと成り果てていた。
目は血走り、顔は涙と涎でグチャグチャになっており、魔法によって動くことを許されない身体は硬直したままガクガクと痙攣を起こしている。ふすーっふすーっと鼻息を荒くする彼の脳内にはもはや、「射精したい」という醜い欲望しか残っていないようだった。

「ヒヒヒッ♡それじゃあ、お望み通りイかせてやるよ♡ 大事にしてた神への誓いを破って、お前 自分だった俺のカラダに射精しちまえ……ッ!!?♡♡♡♡あっ♡♡あぁぁああっ!?♡♡♡♡♡♡」
「ッッ~~~~~~~!!!!♡♡♡♡♡♡」

パチンッとリーサが指を鳴らした瞬間、無理矢理に堰き止められていた濁流が勢いよく彼女の膣内へとなだれ込んで行く。子宮の奥底まで一気に満たされる衝撃、そして熱の籠った液体が性感帯を刺激する強烈な快感を受けてリーサは仰け反るように天を仰ぐ。大量の精液を注ぎ込まれたことによって彼女の腹部は妊婦のように大きく膨れてしまったが――ぎゅるるっと音が鳴ったかと思うと、リーサの腹は先ほどまでの様相が嘘だったかのように、再びすっきりと綺麗なラインを描いていた。

「はぁぁああっ♡♡♡これが俺の魔力っ♡♡♡リーサが持ってた力なんだなァ♡♡」

彼女の体内で行われているのは、先ほどリーサの魂から絞り出した魔力を精力へと変換したこととは真逆。即興で編み出した魔法によって精液を魔力に変換し、自らの魂へと吸収していたのだ。
やがてゴブリンの精巣に蓄えられていた精液は吸い尽くされ、永かった射精の時間が終わろうとしていたが――それを拒絶するかの如く、ゴブリンの睾丸には再び精液が造り出されていった。その終わりを良しとしないリーサが放った魔法によって。

「くひひっ♡まだまだこんなもんじゃねえだろ? もっと射精 せっ♡寄越せッ!♡お前の魔力も命も何もかも全部、俺に捧げろぉっ!♡♡♡♡」
「~~~~~ッ!!!?♡♡♡♡♡♡」

彼女が行使したのは『生命力を精液に変換させる』という効力を持ったもので、奇しくも魔族……雄の精を糧として生きる『サキュバス』が好んで使う魔法でもあった。
男根から精液が放たれる度に、小さな体躯に備わっていた筋肉や脂肪が目に見えて萎んでいく。リーサが吸精による快楽をその身で味わう度に、その精を差し出したゴブリンの荒い呼吸は弱弱しいものになっていく。
どんどんと衰弱していくゴブリンをまるで気にせず、リーサはただひたすらに快楽を貪り続け――やがて彼の全身がほとんど骨と皮だけになってしまった頃、リーサはようやく満足したように長い吐息を漏らした。

「ふぅっ……気持ちよかったぁ♡ まさか雌としての交尾があんなに良いもんだったなんてな、ますます気に入ったぜ……んひっ♡♡ これからもずっと、俺の大切な肉体として使い込んでやるからなぁ、あはぁんっ♡」

リーサは愉し気な様子でそう呟き、その言葉によって下腹部がキュンキュンと疼きを上げる感覚でふるっと身を震わせる。もはや互いが互いを運命の相手だと想い合ってしまった肉体と魂に他者が介入する余地など無く、彼らがかつての肉体へと戻るような事態はもはや二度と訪れないのだろう。

「……さて、念には念をだ。 眉唾ではあるが、死者の魂が蘇ったり転生したりなんて逸話も少なくないみたいだしな」
『ギ……グギッ!? ギヒッ♡グギャァァッ!♡♡』

ピクピクと痙攣するゴブリンに向けてリーサが手をかざした瞬間、再び半透明の腕が現れ、今度はいとも容易くその肉体から魂を引き抜いてく。その手に握られた魂はリーサだった面影など見られないゴブリンそのものの姿になっており、既に理性も無くなってしまっているのだろうか、目の前に居る雌と交尾をしようと必死になって手足をバタつかせていた。

「へえ、驚いたな。魂の形状が変わっちまうなんて……魔力がゼロの状態で肉体の影響に晒され続けた結果か?それとも別の要因が……いや、この現象については他の奴を使って実験でもすればいいか。 今はそれよりも……っと」
『ギィィッ!?』

リーサが魔力を更に強く籠めるのと同時に、ゴブリンの魂を掴んでいた手はその全身を覆ってしまうほどに大きくなっていった。そのまま全身をぎゅっと包み込み……その拳が閉じられていくにつれて、その内部からは苦し気な声が鳴り響いてくる。

「はははっ、思った通りだ! 『掴む』なんて動作ができるくらいだからな、多分この魔法は魂に対して物理的干渉が可能なんだろうよ。 ……それなら、魂そのものを握り潰されでもしたらどうなっちまうんだろうなぁ?」
『グギャッ……ア゛ッ、ア゛ァ゛ア゛ァ……ッ!!?』
「あばよ、哀れなゴブリンちゃん。神の御加護があらんことを♡」

ぐっ、と力強くその手を握りしめた瞬間、中から漏れ出ていたゴブリンの悲鳴が完全に聞こえなくなる。開いた手の平にはもはや何も残っておらず、リーサがそれを見て満足したかのように悪辣な笑みを浮かべるのと同時に半透明な腕は消え去っていた。

「くくっ……あははははっ! これで正真正銘、リーサは俺のカラダになったんだ! くひひっ♡この素晴らしい魔法の力も、蓄えてきた知識も、それにこの気持ちよすぎるスケベボディも……あんっ♡これからは全部、俺のためだけに使ってやるからなぁ……♡♡」

再び乳房へと手を伸ばしては揉みしだき、疼く股間を弄繰り回してリーサは新しく手に入れたカラダによる快楽を堪能する。
かつて自分だった魂を消し去ってしまったというのにその顔には後悔の色は欠片も見られず……むしろ、旧い宿主との繋がりを完全に断ち切ったことで新たなる主の魂を定着させたことに悦びすら感じているようだった。

「さてと、このままオナりまくるのも良いっちゃ良いんだが……その前にソフィアさんを救護しておいた方がよさそうですね。これ以上時間を使って、万が一にでも死なれてしまっていたら後処理が面倒ですから」

ゴブリンの人格は本能のままに快感を貪ろうとしかけたが、リーサの理知的な人格はそれを諫めるように提案をする。刹那的な快楽に興じるのではなく、長い目で見て彼女の主が最大限に愉しめるように。
本来の目的である行方不明者の捜索にようやく戻ったリーサはスッと目を閉じると、物体や魔力を探知する魔力の網を周囲へと張り巡らせていく。以前は四方数十メートルにしか及ばなかった範囲は今や数十キロにまで拡大され……ダンジョン内の構造、生物や魔物、そしてトラップの配置場所に至るまで。その全てを把握した彼女は、行方不明者であるソフィアの位置を特定していた。

「上手く魔物たちから隠れられているみたいですね、よかった……。 早く彼女の所に行って安心させてあげないと」

リーサは乱れた衣服を丁寧に整え直し、ピクリとも動かなくなったゴブリンの死体には目もくれずにダンジョンの奥へと進んでいく。

「……それにしても、迷い込んだのがソフィアさんで本当に良かったです。彼女もまあまあエロいカラダの雌でしたから……くひっ♡ 近くに何匹か手頃な魔物もうろついているみたいですし、助ける前に色々と愉しめそうですね……♡」



***



その後、リーサはダンジョンに迷い込んでしまった女性を無事に助け出し……その日付を境に、『リーサ・クレシュタイン』の名はしばしば歴史書で見られるようになっていく。
魔王に代わる未知の脅威であった『ダンジョン』の初踏破を果たし、仕掛けられた罠の解明やその危険性の周知などを主導した功労者として、リーサの名は広まっていった。更には危険を顧みずに各地のダンジョンを巡り、多くの人々を助けながら奇跡のような魔法の力でその全てを制圧し、安全を期すために管理下に置いていった彼女は『聖女』とまで呼ばれるようになったという。
そのようにして混沌とした時代を収めたリーサは各地の王族や貴族の信頼を得て、遂には自らの国を建国するまでに至る。聖女によって興されたその国は長きに渡る繁栄を築き上げ、玉座には代々魔法の力に秀でた艶麗な女王が君臨し続けた。

――それらの歴史の裏には、聖女の欲望の生贄となった者たちの魂が存在していたのだが……それは誰に語り継がれることも無く、当代の女王だけが知るのみであった。

メス牡蠣さん宛の匿名メッセージ

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