私がイケメンで、彼が喪女で

 営業部の部屋、終業時間に隅っこのデスクで。
 私、犬榧 優恵(いぬがや ゆえ)はパソコンを触って終業の後片付けをしているフリをしつつ、ため息を吐きながら部屋の中心にいる男性に目を向ける。
 獅童 京也(しどう きょうや)先輩。
 同じ営業部の三歳年上の先輩で、私が絶賛片想い中の相手。背が高くて少し茶色い髪のイケメンで、クールだけど優しくて……少女マンガの主人公の恋人みたいな、すっごくカッコいい人。
 私が入社したての頃、教育係として面倒見てくれて……それ以来、好きになっちゃった。
 まぁ当然、そんなカッコいい彼の周りにはいつも人がいる。
 先輩、同期、後輩、他の部署の女性社員まで、みんな彼に夢中だもんね。私みたいな、地味で卑屈な女では釣り合わないし。
 私はこうして遠くから眺めて、たまに話しかけてくれるのを待ってるだけ。
 あ、先輩が後輩の子と何か話してる。どんな関係なんだろ。あの子、可愛いから恋人になってたりするのかな。
 でも二人はすぐに離れて、先輩はバッグを手に席を立つ。一緒に帰るとかじゃないんだ、良かった。多分仕事の話だったんだね。その割にはあの子、すごく嬉しそうだったけど。
 はぁ。いいな。グレーのスーツの下には細くも筋肉質な身体が隠れていて、抱きしめられると固く熱い感触に包まれ私はキュンとしてしまうの。でも密着しているから心臓のドキドキが彼にも聞こえて、私がえっちなことを期待してるってバレちゃって。ボクサーパンツを下ろすと、その細い体には不釣り合いなほど大きく太いアレが……。
 って、そんな妄想してる間に先輩がどっかいっちゃった。それに私、ムラムラしてきたっ。
 なんか今日は、そういう日なのかな。男の人にめちゃくちゃにされたい気分の日。でも男の人なら誰でもいいってわけじゃなくて、やっぱり好きな人がいい。
 ま、そんな贅沢言ったところで、叶いっこないんだけどね。今日もお気に入りのおもちゃでオナニーかな。
 私もパソコンをシャットダウンして、このまますぐ帰宅することにした。別に一緒に帰るほど仲の良い人もいないし、しょっちゅう寄るところがあるほど多趣味でもない。正直、獅童先輩を眺めるために出社する以外、今楽しみなこととかないかもしれない。
 はぁ。寂しい生き方してるなぁ、私。
 自虐的に笑って席を立ち、廊下に出る。うぅ寒っ。タイトスカートの中に入り込む冷たい空気に、身体がぶるりと震えた。
 やばっ。おしっこしたくなっちゃった。
 あんまり会社のトイレとかって使いたくないんだけど、自宅までは我慢できないし駅のトイレよりマシだから。
 そんなことを考えながら、早歩きで廊下を進むと。
「へっ? ひゃあ!」
 曲がり角から急に大きな人影が出てきて、私はぶつかってしまった。
 いてて、尻もちついちゃった。おしっこ……漏れてないよね。良かった。って全然良くないよ!! 相手の人も転けちゃったみたいだし、謝らなきゃ!
「ごっ、ごめんなさい! 私、不注意で……」
 あれ。
 黒のレディーススーツに長い黒髪、伸ばした前髪に隠れた顔と赤縁のメガネ……これって、この地味女って。
「わ、私……?」
 うん、どう見ても鏡で見る私だ。左右反転してないからなおのこと気持ち悪い。いやぁぁっ、まさかドッペルゲンガー!? わ、私これから、死んじゃうの?
「な、これって……はぁっ!?」
 もう一人の私も驚いたような表情と声で、自分の身体をまさぐる。うぅ、ドッペルゲンガーとはいえその、おっぱい触ったりスカート捲ったりされると、恥ずかしいよぉ……。
「おい、お前は誰だ?」
「私は、犬榧 優恵ですけど……ん、んんっ。なに、声が……?」
 なんか、喉がイガイガする。声も低くて、まるで男の人みたい。
 男の人……?
「やっ、え、何これっ!? 私、男の人っ!?」
 うそっ、服がグレーのメンズスーツになってる。青のネクタイとかズボンとか、明らかに女ものじゃない服を着てる。それにいつも視界を遮る、コンプレックスな大きめのおっぱいがない。……きゃーっ! こっ、ここ股間に、なんか生えてるぅっ!
「犬榧……!? 俺は獅童、獅童 京也だ」
「しっ、獅童先輩っ!? が、なんで私に!?」
「これはアレだな。俺たち……入れ替わった、ってやつか」
 入れ替わった……!? それってドラマとかでたまにある、身体と心が交換されるっていう、あの?
 つまり私が獅童先輩になっちゃって、獅童先輩は私になっちゃったの!?
「そんなっ、どっ、どうしましょうっ!?」
「とにかく落ち着け。どこか人のいないところでじっくり話し合いたい」
 立ち上がった獅童先輩に手を差し伸べられて、私は反射的にその手を握った。
 獅童先輩、こんな時でも落ち着いてる。頼りになるし、見た目は地味女の私なのにやっぱりカッコいいな。
 あ、う、それにいろいろと変だけど。私、獅童先輩と手、繋いじゃった? そんなこと気にしてる場合じゃないけど、なんか嬉しい……。ドラマでも、入れ替わった男女って次第に恋に落ちていったりとか、するよね? 元に戻るためにキスしたりとか、あるかな……。
「……その前に一つ確認したいんだけど」
「はいっ、な、なんでしょう……?」
「お手洗い、行ってきていいか?」
 ある意味、キスより遥か先にステップアップしちゃった。





「はぁ。トイレから出たばかりなのに、またトイレに入る羽目になるとは」
 私になった獅童先輩が先に女子トイレに入り、誰もいないことを確認してから私も一緒に中に入る。これは「男に自分の身体を好き勝手されるかもしれないの、嫌だろ?」と先輩からの提案だった。
 私は、獅童先輩になら……でも私なんかに先輩が厚意を向けてくれるのが嬉しくて、私はその言葉に甘えることにした。
 落ち着いてくると、自分の匂いがいつもと違うことにも今更気付いた。私の、女のシャンプーの甘い匂いとは違う。爽やかでキリッとした、ミントみたいな香り。すれ違う時に鼻腔をくすぐる、先輩の匂い。
 私は洗面台の鏡を見る。ホントに、私が映るべきところに獅童先輩が映ってるんだ。先輩のカッコいい顔、逞しい身体、低くもよく通る声。女子社員たちが求める獅童先輩の全部が、今は私のものになってるんだ。
 そ、それに先輩、さっきトイレから出てきたところだったんだよね。
 つっ、つまり私のお股には、獅童先輩のおしっこを出したばかりの、獅童先輩のおっ、おちんちんが付いてるわけでありましてっ……!?
「……俺、本当に犬榧になってるんだな」
「うぇっ!? あ、そうですねっ。ごめんなさいっ、私なんかの身体でっ」
「いや、事故みたいなものだから謝るなよ。俺だって悪かったし。ん……前から思ってたんだけど、前髪もうちょい切れば? ほら、せっかく可愛い顔なんだからさ」
 先輩、私の前髪上げてそんなにまじまじ顔を見て……ん、今なんて?
「かっ、かか可愛いですか!? 私が!?」
「あ、悪い。これセクハラか」
「いえ、そうではなくっ。嬉しいっていうか……」
「っと、こんなことしてる場合じゃなかった。個室、入るぞ」
 あうぅ、好きな人に可愛いって言ってもらえた余韻を噛み締める暇もなく、私たちはトイレの個室へ。
 想い人におしっこ見られて、音を聞かれて、匂いを嗅がれて、それだけでも恥ずかしいのに。あろうことか私の膀胱に溜めていた汚くて臭いおしっこを、先輩に排泄させちゃうなんて……天国から地獄への急転直下だよ。あぁもう死にたい。でも先輩の身体のままじゃ死ねないぃ……。
「とりあえず目は瞑るけど、信用できないならハンカチか何かで目隠してくれ。手を縛るなり、鼻を摘むなりしてくれてもいいからな」
「えと、でも……いつまでこの状態かわかりませんし……その、一人で行ける程度には、お、お互いのおしっこの仕方、わかっておいた方が良くありませんか……?」
 そう、いつまで入れ替わったままなのか。それが私の不安だった。
 だって地味で仕事もトロい私が、獅童先輩の代わりに生きるなんてできるはずがないから。またすぐぶつかって、元に戻るならそれに越したことはないんだけど。
 先輩も少し考えてから頷いた。
「それもそうか。早く元に戻るのが理想だが、一理あるな。じゃあ申し訳ないが教えてくれ、犬榧のいつものシ方」
「はい……えっと、まずはスカートを腰の辺りまで捲ってください。それから、パンストと……ショーツを下ろして、便座に座れば大丈夫です」
「よし、こうか」
 先輩、極力下を見ないようにしてくれてる。
 やっぱり好きだなぁ、先輩のそういう紳士的なところ。
 でも先輩の目を通して、私からは見えちゃう。自分で思っていたより脚太いなぁ、私。お尻も大きいし、こうして客観的に観察すると太って見えちゃう。……いや実際、痩せてはいないんだけど。
 カッコいい先輩に、こんな地味でデブな女の身体を押し付けちゃうなんて。元に戻れなかったら、どうお詫びすればいいんだろ。
「それで大丈夫です。あとはお股の力を抜けば、出ると思います。あ、音姫も使ってくださいね?」
「あぁ、女性はそうするんだったな。んっ、あぁ……」
 人工的な水音が、個室の中に響く。
 けれどこれだけ近いんだもん。私には先輩が出す尿の音、先輩が漏らす吐息が聞こえていた。それに先輩は男の人だから、内股にせず脚を開いちゃって。私の……先輩のおまんこから、黄色いおしっこが出てるの見えちゃう。
 注意しなきゃ、そう思ったのに。私は何故か、じっと先輩の放尿に見入っていた。
 ……え、うそ、やだっ。私、おちんちん勃起してる!? なんでっ!?
「ふぅ。で、確か最後には拭くんだよな」
「そっ、そうですねっ。濡れたままショーツを履くと気持ち悪いですし、遠慮せずにしっかり拭いてください」
「あぁ」
 そこまで説明して、私は逃げるように個室を、女子トイレを出た。
 だってバレたくないもん、勝手に先輩のおちんちん勃起させちゃったなんて。自分のおしっこに興奮する変態だって、思われたくないもん……。
 獅童先輩とこんなにお話できるのは嬉しいけど、同時に怖いよ。
 こんなに近いと、いろんなことがわかっちゃうから。せっかく距離が近付いてきたのに、ふとしたことで嫌われちゃうような気がするから。
「急にどうしたんだ犬榧。こっちは無事終わったけど」
「べ、別に大丈夫です! 私、帰りますっ!」
 トイレの入り口の壁にもたれていると、先輩も出てきた。
 私は反射的に先輩に背を向けて、また早歩きでその場を離れようとする。でも先輩は、ガッと私の手首を掴んだ。
「ちょっと待て、落ち着け。帰ってどうするつもりなんだ? このまま互いの家に帰ったって、明日の着替えすらないだろ。まずは」
「触らないでくださいっ!」
 私のものだった柔らかい肌が、先輩の体温が、伝わってくる。そしたら私、またおかしな気分になっちゃう。
 だから私は先輩の肩を突き飛ばして、その手を振り払った。
「きゃっ!?」
「あ、いや、あぁ……」
 でも今の私は体格の良い男で、先輩は肉付きが良いだけの女。それを意識していなかったから力加減を間違えて、先輩は壁に頭を打っちゃった。
 あぁ、もう。ホントに全部が嫌になる。
 なんで私っていつもこうなんだろ。鈍臭いからやることなすこと全部裏目に出て、思慮も浅いから何も解決できない。先輩は私のことを想って手を掴んでくれたのに、私は……。
「……先輩、ごめんなさい」
「いや大丈夫、俺こそごめん……。急に触られたらビックリするよな。犬榧のこと、全然考えられてなかった」
「いえ、そんな」
 返す言葉も思いつかなくて、私はただ俯く。
 その時、先輩の視線が私の下半身に向けられていることに気付いて、顔からサッと血の気が引いていた。
 やだ、あぁっ……見られちゃった。
 むさ苦しい身体を押し付け、おしっこさせて、言うことを聞かず、怪我させて、その上おちんちん勃起してるところまで見られた。
 もう終わりだ、私。入れ替わりなんてラブコメの定番みたいなことが起こったから、ちょっと舞い上がってたけど。私はどこまで行っても私で、ヒロインになんてなれない。身の程を全然弁えてなかったから、こんなことになるんだ。
 獅童先輩の表情が驚きから別のものに変わる。けれど私はこれ以上、先輩の顔を見られなかった。
「犬榧、俺のアソコ勃起させてるんだ?」
「ごめん、なさい……でも私、そんなつもりじゃなくて……」
「わかってるって。犬榧は男になったばかりだもんな、何も悪くない」
「獅童先輩……」
 泣きそうになっていた私の頭を、先輩は撫でてくれた。
 そんなことされたら、勘違いしそうになっちゃう。今さっき自惚れた自分を戒めたところなのに、先輩も私のこと好きなんじゃないかってまた変な希望を抱いちゃう。
「とりあえず二人きりになれるところに移動しよう。ほら、鞄は前に提げて股関を隠せ」
「……はい」
 こうして私は数々の失敗を犯しつつも、先輩と一緒に帰ることになった。
 でもその間、先輩と私の距離はとても近くてドキドキが止まらなくて。先輩から漂う私の匂いは、嫌いじゃなかった。





 私は周りに流されやすい。だって自分の意見を上手く伝えることが苦手だし、私なんかよりみんなが決めたことの方が正しいって思って生きてきたから。誰かの決めたことに口出しをする権利なんて私にはないし、できたとしてもその時には既にいろいろ遅すぎることが多い。
 だから私は、今の状況がさすがにおかしい気がすることを、ようやく伝えることができた。
「あの、獅童先輩」
「どうした、犬榧」
「私たち、なんでホテルに来たんでしたっけ」
 私たちは今、会社の近くのビジネスホテルの一室にいる。それもシングルの狭い部屋。
 先輩に「まずはホテルに行こうか」と誘われてから頭がパンクして、私の思考能力はほぼ破壊されていた。
 だからホイホイついていったけど……だっ、だってホテルだよ!? 若い男女が、二人きりでホテルにチェックイン。それが意味することって、一つしかないよね……? しかも憧れの獅童先輩と二人きりだなんて。
 ……いや、でもさすがにそれはないか。なんたって今、私たち身体が逆だもん。なんなら元に戻ったって、そんなこと起きないよね。相手は私なんだから。
「人目を気にせず、元に戻る方法を試したり今後のことについて話すためだろ。三時間のデイリーユースだし、料金は俺が払うよ」
「あ、ありがとうございます……」
 そう聞いて、ホッとしたような寂しいような。
 でもそうだよね、元に戻るためだよね。また一人で変な妄想して、気持ち悪いなぁ私。
「ふぅ、ようやく一息つけるってところだが。ブラウスのボタン、少し外していいか?」
「えっ!?」
「いや、どうも胸の辺りがキツくてな。これ、サイズ合ってるのか? 犬榧もどこか苦しいところがあったら遠慮なく言えよ」
「あ、はい、えぇ……ボタンも、外してもらって大丈夫ですよ」
 こんなシチュエーションだから、もう先輩の言動の一つ一つが心臓に悪い。
 私が許可すると、先輩は苦戦しながらもブラウスのボタンを外していく。そっか、服のボタンって男女で左右が違うんだ。じゃあ私も、このシャツを脱ぐ時は……脱ぐ時、来ちゃうのかな。
 あ、そこのボタン外したら……あぁ、見えちゃってる。薄いキャミソールとおっぱいの谷間、黒いブラジャーも少し。
 また今日に限って、なんであんないやらしい下着選んでたんだろ、私。もし先輩に見られたら、欲求不満とか思われないかな。いやまぁ、それも事実ではあるけど。
 この部屋に座れる場所はベッドしかなく、正座をした私とあぐらをかく先輩の距離は三十センチ程度しかない。手を伸ばせば、それだけで届いちゃう。先輩の胸で揺れるたわわなおっぱいや、めくれたスカートから覗くお股に。
 あぁだめっ、せっかく落ち着いてきたのにまたおちんちん大きくなっちゃった……!
 咄嗟に手で覆って隠すけれど、それは逆に「今おちんちんが勃起してます」って白状するようなものだった。
「そこ、苦しいんだろ。隠さなくても大丈夫だから」
 先輩はさらに距離を詰め、私の股関に手を伸ばす。私はそれを払ったりせず、ただ受け入れた。ズボンのベルトが外されて、金具とファスナーが開けられて。トランクスのボタンも外すと……これまで何度も妄想してきた、獅童先輩のおちんちんが現れた。
 わぁ、想像より大きいかも。先の皮はめくれていて、ピンク色の先端が何かの液でヌルヌルといやらしい光り方をしてる。これが、先輩のおちんちんが、今は私に生えてるなんて。
「俺のこと見て興奮しちゃったか。最近ヌいてなかったし、一回出して楽にした方がいいかもな」
「だっ、出すって、それは……!」
「わかるだろ、興奮したオトコがチンコから出すもの。ほら、触っていいぞ」
 さ、触っていいの……? 本人から許しを得てしまった以上、ためらう理由はなかった。
「ひゃんっ」
 すごい、握った瞬間ビクッてなった。女は一つの性感帯が全身に繋がってじんわりと気持ち良くなるような感じだけど……男の人って、こんな感じなんだ。「下半身は別の生き物」なんて例えを聞いたことがあるけど、ホントにそうかもっ。
 漫画とかで見た真似をして、おちんちんシコシコ。一点に、おちんちんに気持ち良いのが集まって、手が止まんないっ。
「はぁ、はぁっ……!」
 しかも触っているうちに、手の中でさらに大きくなっていく。そのたびに、気持ち良さも増していく。
 でもなんでだろ。こんなに大きくなって、いつ絶頂してもおかしくないと思うんだけど。何かが足りない、そんな気がする。
「ほら、これだろ」
 その足りない何かを、先輩が提示してくれた。
 私のものだった、先輩の足。ベージュの薄いパンストに包まれたそれをどうするべきか、この身体が知っていた。
 私は空いている左手で先輩の足を掴み……顔の前まで、持ち上げる。そして汗で蒸れて湿ったそれの匂いを、思い切り吸った。私の足、くっさ♡
 それなのに興奮が止まらない。おちんちん、一気に元気になってきた♡
「はぁ、あぁっ、これ、なんか来てますっ♡ くっさい私の足の匂いで、イクっ……♡」
 どぴゅっ、どぴゅっ、どぴゅっ。
 おちんちんが痙攣して、そのリズムに合わせて液体が放たれる。思っていた以上に勢いよく飛んだそれは、先輩が着たレディーススーツを白く汚していた。
 これが、男の人のイク……。快感は女の方が上だけど、なんだかすごくスッキリする。ダラダラと続く女のオーガズムより、こっちの方が好きかも。
「犬榧、そろそろ脚が痺れてきた」
「え、あ、はい。ありがとう、ございました……」
 最後に深く嗅いでからお礼を言って、先輩の足を離す。
 それにしても、私の足ってあんなに臭かったんだ……。ちょっと、いやかなりショックだなぁ。
 地味でデブでその上臭いなんて女としてもう最悪だし、私はそんな身体をクールでイケメンな獅童先輩に押し付けちゃったんだ。……それってもう、死罪に値するのでは?
 一回イってスッキリすると途端に冷静になってきた。これが噂に名高い、賢者タイム……!
「やっぱり入れ替わっても、性的嗜好なんかは身体のものを引き継いでるんだな。脳まで入れ替わったわけではないからか、それとも」
「あの、じゃあそれってつまり、先輩は……」
「ん、あぁ。匂いフェチだ。特に女の汗とかの。といっても、今は犬榧がそうみたいだけど」
 知らなかった……いや、本来なら知るはずもないんだけど。
 でも今は私が先輩の身体だから、私が匂いフェチなんだ。だから私の臭い足をオカズに、イクことができたってことだよね。先輩、女の人の臭い匂いで興奮するんだ……。
 あれ、だとしたら。
「……獅童先輩は、その……女性とこういうの、したことあるんですね」
「まぁ、それなりにな」
 概ね予想通りの返答。
 なのに私は、悲しいやら悔しいやらでまた泣きそうになっていた。
 そうだよね、獅童先輩はカッコよくて優しくて素敵な男の人だもん。言い寄る女性はたくさんいるだろうし、その中には私より可愛かったり綺麗だったり……先輩のタイプだったりする子だって、当然いるよね。
 そして先輩とホテルで抱き合って、一つになった人も。
 ははっ。私性懲りも無く、また変な勘違いしてる。
 先輩と入れ替わって、一緒にホテルで過ごして、性癖を教えてもらって。自分は先輩の特別なんだって思ってた。
 でも入れ替わりはともかく、先輩に性癖を囁かれてセックスした女性は多分いっぱいいる。
 そんな人たちに対して「獅童先輩を盗られちゃった」って、勝手に被害妄想しちゃってる。そもそも先輩は私のものでもなんでもないのにね。
 このバカみたいな性格、ホントどうにかならないのかなぁ。
「で、犬榧の性癖は……背が高くて細身だけどガタイはしっかりしたイケメン、ってところか」
「え……?」
 顔を上げると、そこには知らないオンナがいた。
 黒い下着にベージュのパンストを履いただけの、長い黒髪とメガネ、細い目が知的でセクシーな女性。そのむっちりとした身体はオスの情欲を誘うにはあまりに肉感的で、今にもむしゃぶりつきたくなるような柔らかさと弾力を感じさせる。
 何より全身に流れる汗の雫は「汚い」「臭い」といった本来ならマイナスの意味を持つワードを想起させ、この身体の、私の本能を刺激した。
 彼女は脱ぎ捨てたスーツにこびりつく精液を右の人差し指ですくい、厚い唇を開いて舌で舐め取った。その様子がまた扇情的で、しなんだはずの私のおちんちんがまた鎌首をもたげる。
「お前、俺のこと好きだったんだな」
 そう、目の前にいるのは確かに、私の身体に入った獅童先輩のはずなのに。
 私ではどう頑張ったって出せないエロカッコいいオーラと漲る自信によって、まるで別人のように見えていた。
「なっ、なんでそんなこと……」
「わかるよ、今は俺が犬榧 優恵だから。お前の性癖のせいで、俺の身体を見ているとムラムラしてくるんだ。本当は元に戻るまで我慢するつもりだったが……お前のオナニー見てたら、俺も女のカンジを知りたくなった」
 先輩の手が、私の手を掴む。そのまま、私の手は吸い込まれるようにおっぱいに導かれた。
「あんっ♡ いいぞっ。今度は俺に、女を教えてくれっ」
 私のおっぱい、重くて柔らかい。今すぐブラジャーを取り払って、汗でぬるぬるしたおっぱいを揉みたいっ。
 気が付くと、私は先輩を押し倒していた。
 先輩も誘うような目つきで私を見つめ、「このまま抱いてくれ」って訴えてる。
 でも……違う。
 獅童先輩も一つ勘違いしてる。そんな状態でセックスするのは、何か違う気がする。全部先輩の言う通りだけど、そうじゃない。それだけじゃない。
 このまま獅童先輩とセックスしたとして、それじゃあ私の気持ちは何も伝わらない。多分私も先輩も、本当に気持ち良くなることなんてできない。ただのレイプになっちゃう。
「嫌です……。私は獅童先輩が好きですけど、こんな獅童先輩は好きじゃないですっ!」
 今の先輩は私の身体の性欲に飲まれて、女としてセックスをしてみたいだけだもん。そんな先輩は好きじゃない。
 私は優しくてカッコいい、いつもの先輩に抱かれたい。私という人間を、好きになってもらいたい。
「犬榧……?」
 あれ、私泣いてる?
 そういえば私、こんな大声出したの初めてかも。ううん、こんなにハッキリ自分の気持ちを声にしたこと自体、初めてだ。
 先輩の身体になったおかげで堂々と声を出すことができて、でも感情の出し方がわかんなくて。
「先輩の言う通りですよっ。私は背が高くて細いけど筋肉があるイケメンが好きですっ! でもそれは、獅童先輩じゃなきゃダメなんです!」
「何だそれ、一体どういう、んっ♡ どこ舐めてるんだよ、そんなところより胸とか股とか、あぅっ♡」
 私は先輩の脇腹を撫でながら、鎖骨を舐めていく。人の身体を舐めるなんて初めてだけど、先輩の身体の経験値のおかげで嫌悪感はなかった。
「女の鎖骨とか脇腹も、性感帯の一つなんですよ。ん、ちゅっ、れろれろ……。でもおっぱいみたいに直接大きな刺激を生み出すわけじゃなくて、神経が子宮に繋がっているから気持ち良くなれるそうなんです」
「俺の、子宮に……? ひゃ、今度は脇、舐めるなぁっ♡」
「ぺろ、すんすん……。先輩のワキ、くっさいですね。しかも毛まで生えてるじゃないですか」
「違うっ、これは犬榧の身体だろ! 一体何が、やぁんっ♡ 言いたいんだよぉっ……」
 ふふ。さっきまで余裕たっぷりに誘ってきたのに、ワキが臭いって言われて恥ずかしがってる。先輩、可愛い……♡
「先輩はわかってないんです。今の獅童先輩は子宮があって、このままセックスしたら赤ちゃんができちゃうんですよ」
「そんなことわかって」
「いいえ、わかってません。今の先輩は地味で根暗でデブでくっさい、男の人からは見向きもされないような喪女なんです。私、先輩の身体を奪ったまま外に出て、もっと綺麗な女の人とセックスしたっていいんですよ」
「それは……!」
 あぁ。ごめんなさい先輩、そんな泣きそうな顔させて。酷いこと言ってるのは自分でもわかってるんです。
 でも言葉が止まらない。
 先輩の身体だからか感情と自信が溢れてきて、私じゃセーブできない。
「じゃあなんで私が、そんなイモ女になった先輩を抱こうとしているか、わかりますか?」
「……教えてくれ」
 深呼吸。
「それでも私は、先輩が好きだからですっ! 高身長じゃなくたって、イケメンじゃなくたって、臭い女になったって、獅童先輩の心が好きだからですっ!」
 言った、言っちゃった。
 私、獅童先輩に告白しちゃった。
 あぁぁ、どうしよう。勢いに任せてこんなこと言っちゃったけど、その前に偉そうなこと&罵倒の言葉みたいなの浴びせちゃったよぉ……! これでフられたら私、自暴自棄になってホントにこの身体持ち逃げしちゃおうかなぁ!?
「……そうか。でもわかってないのはお前もだろ、犬榧」
「えっ、んむっ!?」
 あ、頭抱きしめられたと思ったら、何これっ。私、先輩とキスしてる!? 私、ファーストキス中!?
「ちゅ、ふぅ。お前は自分を過小評価しすぎだ。地味で根暗ってのは、慎ましいとも言うんだよ。それに男にとっては、これくらいむっちりした女がちょうど良いんだ。臭いのは……まぁ、俺は好きだよ」
 う、最後のは否定してもらえなかったけど、でもそれってつまり?
「俺がゴムも考えもなしに、ただセックスをねだると思ったか? その後の責任くらいは取るつもりだったに決まってるだろ。……俺も好きだ、犬榧。割と以前からな」
「獅童先輩っ……!」
 お互いの気持ちがわかった今、もう言葉は要らず怖れるものもなかった。
 今度は私からキスをする。唇を咥え合って、やがて舌を触れ合わせて。あぁん、幸せ。唾液のぬめりが、えっちな気分をすごく高めてくれる。
「はぁ、あぁっ……先輩、下着脱がせていいですか?」
「ん、頼む。お前の身体、感じさせてくれ」
 私たちは互いを愛撫しながら、服も下着も脱がせていく。今の私の身体は、毎日妄想していた通りの細くも逞しいものだった。この身体をオカズにオナニーだってできちゃいそう。
 でも今は目の前に先輩がいる。私の裸なんて毎日見てるはずなのに、この中に先輩がいると思うと興奮せずにはいられない。
「先輩のおまんこ、もう良い感じに濡れてますね。……おちんちん、挿れさせてください」
「あぁ。……一応聞いておくけど、犬榧は処女か?」
「は、はい。でも毎日おもちゃでオナニーしてるので……あまり痛くはない、と思います」
「そういうのは嫌いだと思ってたけど。意外とえっちな女、んひっ♡」
 そんなこと言われると恥ずかしいから、両脚掴んでおちんちん挿れて黙らせちゃった。これが正常位、なのかな? 太いディルドとか使ってるから、結構すんなり入っちゃった。
 そして未知の快感に頭が追いついていない先輩を見ると、また強気な気持ちが湧き上がってくる。
「どうですか、先輩っ。今は先輩が、そのえっちな女の子になってるんですよっ! 先輩のこのおちんちんで毎日妄想オナニーしてた、いやらしい女の子にっ!」
「んぁ、お、んぉぉっ♡ 俺のマンコ、しゅごいぃっ♡ 待て、男なのにこんなあぁっ、壊れる、頭変になるぅっ♡」
 女の快感は男の何倍とか、男は女の快感や出産の痛みに耐えきれないとか、眉唾な話だと思ってたけど。なんかあのクールな先輩がこんなに乱れているのを見てると、あながち嘘でもない気がしてきたかも。
 でも今更、止められないよね。
「へー、先輩は男なんですか? その割にはおっぱいもプルンプルン揺れてますけど」
「俺は、男だっ♡ 元に戻ったら、絶対、お前もこうして、んぃぃぃっ♡」
「あ、奥まで入っちゃいましたっ。わかりますか、先輩っ。さっき温めておいた先輩の子宮に、私のおちんちんがキスしてますっ。一緒に赤ちゃん作ろうねって、ちゅっちゅしてますよっ♡」
 いつか先輩と交わることも見越して……ってわけじゃないけど、私のおまんこは奥まで開発済みだから。先輩もきっと、すごく悦んでくれてるよねっ。
 あぁ、このえっちなビデオでしか聞いたことがない、パンパンって肉がぶつかる音。ホントに私、先輩とセックスしてるんだ。
「やっ、あぁぁっ、らめ、らめぇっ♡ 子宮、コツコツされたらぁっ、メスになるぅぅっ♡ きもちくてっ、おチンポで満足できなくっ、男に戻れなくなっひゃうのぉっ♡」
 そんなこと言われちゃったら。
 先輩のこと、本当にメスにしたくなっちゃう。
「それの何がっ、ダメなんですかっ! もう戻れなくても、いいじゃないですか!」
「でもおれっ、このままじゃにんしんしちゃうっ♡ あかちゃんできちゃうっ♡ おかあさんになっひゃうよぉっ♡」
 さっきは責任取るって言ってくれたのに、いざ自分が産むと考えると怖くなっちゃったのかな。まぁそうだよね、私だって妊娠とか考えたらちょっと怖いし不安だもん。
 じゃあ不安をかき消すくらい、気持ち良くしてあげなきゃ。
「わかりましたっ、じゃあ元に戻って、私が産みますからっ! だからこのまま、出させてくださいっ!」
「あ、あはっ、やったぁ……♡ じゃあいいぞっ、なかにだしてっ♡ んぁ、あ、あ、あ、きてるきてるきてるっ♡ いぬがやのザーメンきてるっ♡ こづくりなかだしセックスでイクっ……♡ んっ、あ、あ゛ぁぁぁぁぁぁっ♡」
 交わる前から興奮がほぼ最高潮に達していた私たちは、セックスが始まって数分と経たずに絶頂に至った。
 獅童先輩のキャラとか人格を破壊しちゃった気がするけど、大丈夫かな。二度目の賢者タイムでそんなことを考えつつも、意識が飛びかけている先輩のお腹をさする。
 しかも「元に戻って私が産みます」とか言ったけど、元に戻る方法ってあるのかな。
 先輩の責任を取るって言葉に甘えて、めちゃくちゃ無責任なこと言って中出ししちゃった。これは元に戻れなかったら、あとでちゃんと謝ってピル飲んでもらわなきゃダメかも。
「はぁ、んっ……犬榧っ、調子に乗りすぎだぞ、お前……」
「えっと、その、ごめんなさい……。じゃあ早く元に戻る方法を、わぷっ!?」
 今度は起き上がった先輩が、私の顔におっぱい押し付けてきたっ。
「次は対面座位だ。今度は俺のおっぱいも……気持ち良くしろ」
「や、でも私、もう二回も出して……流石にこれ以上は、もう出せなんっ♡」
「好きだろ。この毛が生えたくっさい脇の匂い♡ ほら、またおチンポ大きくなってきたじゃないか♡ もっと中出しして、もっと気持ち良くしてくれよ♡」
 こんなこと言ったら先輩は怒って否定しそうだけど……先輩、女の快楽にハマっちゃったみたい。
 まぁ私も人のこと言えないくらい、男の身体が気に入っちゃったし……今はこの幸せを、もう少し楽しんじゃおうかな。





 で、結局私たちは元に戻れなかった。
 ぶつかったりキスしたりセックスしたり、何度身体を重ねても私は男、先輩は女のまま。
 周りにこのことを知られるわけにはいかないけど、仕事をサボるわけにもいかなくて。入れ替わって数日は有給を取ったりしたけど、私たちは仕事に復帰することにした。
 まぁ同じ営業部だし、仕事内容自体はあまり困ることがなかった。獅童 京也、つまり今の私が犬榧 優恵を付き人というかアシスタントに任命することで、一緒にいられる時間も増えてフォローもしてもらえるし。周りの社員からは私と先輩が付き合ってるんじゃないかって噂になってるけど、それすらも心地良い。
 困ったことと言えば、中身が私になっても相変わらずこの身体は女の子からモテること。
 それから私になった先輩はクールでセクシーで仕事がデキる女だから、急に男性社員にモテるようになっちゃったことかなぁ。中身が違うだけで顔までキリッと別人みたいになって、今更ながら私の身体の女としての魅力に気付かされた。
 そんな私たちだけど、今は同棲して……甘々な毎日を送っているから、浮気とかは絶対しないよ。
「ただいまですー」
 今日もマンションに帰宅するとTシャツにジーパン、赤いエプロンという新妻っぽい装いで先輩が出迎えてくれた。髪はポニーテールになっていて、ホントにセクシーでデキる奥さんって感じ。
「残業お疲れ、犬榧。夕飯、もうすぐできるから先に風呂入ってこい」
「えー、今日は先輩といちゃいちゃしてからお風呂に入るつもりだったんですけど。あとその犬榧って呼ぶの、そろそろやめません? 優恵って呼んでくださいよぉ」
「うるさいな、犬榧は犬榧でいいだろ。そういうのは、ちゃんとプロポーズしてから……。いや、それに俺はもう風呂に入ったんだ。お前も今日は風呂入って食べて普通に寝ろ」
 一瞬乙女みたいな表情を見せつつも、先輩はやっぱり強気でかっこいい先輩のまま。
 でもこんな澄ました顔してるのに、ベッドでは「しゅきっ♡ もっとおれをおんなのこにしてっ♡」みたいな感じだから面白いよね。この前乱れているところを録音して、正気に戻ってから聞かせたら二時間くらい口を聞いてくれなかったけど。
 私は先輩に抱きついて、すんすんと鼻を鳴らす。
「ホントにお風呂入りました? ちょっと汗臭くないですか?」
「しっ、仕方ないだろ、料理で火を使ったんだから! ほら、つべこべ言わず服を脱いで風呂に入れ!」
「じゃあ服、脱がせてください」
「はぁ。最近お前、図々しくなったな」
 なんて言いながら、私の希望を叶えてくれるところも好きだけど。
 こんな和やかな空気だからこそ、今まで怖くて聞けなかったこと、聞いてみようかな。
 私は深く息を吸い、先輩に尋ねた。
「そういえば先輩って、今までも何度か女性とお付き合いしてたんですよね。それって、どうなったんですか?」
 先輩は自分が匂いフェチだと自覚する程度には、女性を抱いている。
 もしまだ関係が続いているような女性がいればショックだし、全員と別れているとしても……それはそれでいつか、私とも別れることになっちゃうんじゃないかって不安になる。
 その答えがどちらでも、聞きたくない。
 だから今まで避けてきたけど、こんな不安を抱いたまま一緒に生活するのはやっぱりつらい。
 そう思って尋ねてみたけど。
「心配しなくても全員別れてるよ。俺がフられて」
「えっ、先輩がフられたんですか!?」
 おおっと、それは予想外の答えかも。
 今の先輩はクールビューティーな美女だけど……男だった時は、相当な優良物件だったのに。それが何人もの女性からフられるって、一体どういうことなの?
「あぁ。みんな俺の匂いフェチの激しさにドン引きしてな。今にして思えば、彼女に『三日間風呂に入らないでくれ』とか頼むのはさすがにバカだった。お前が好きだったのに告白しなかったのも、まぁ……この性癖のせいでフられるんじゃないかって、不安だったからだ」
「ぷっ、ふふっ……なんだ、そんなことだったんですね!」
 ホント、笑っちゃう。
 こんなことでちょっとうじうじしていた私がバカみたい。そういえば久しぶりだなぁ。こうして勝手に被害妄想して落ち込むの。
 でも今の私はそれを笑い飛ばせちゃうくらいには、明るくなれたかな。
「なんだか安心したら、先輩の匂い嗅ぎたくなってきました。先輩も服、脱いでくださいよ。あ、それから先輩は三日間お風呂に入らないでください! ワキの毛を剃るのも一ヶ月くらい禁止で!」
「あ、ちょっ、やめろっ♡ 調子に乗るな犬榧っ!」
 そんなこんなでくんずほぐれつしてたら、私たちはいつの間にかベッドでセックスしちゃってた。
 心も身体も性癖も、全部晒して認め合える。先輩とそんな関係になれたのは、入れ替わりのおかげ。結局なんで私たちが入れ替わったのかはわからないけど……今が幸せだから、まぁいっか。

あとがき
どうも、これを書いた異空と申します。
TSというジャンルに触れたての頃、この祭りシリーズの作品も何度も読んでいました。
その私が、ここに作品を載せていただくようになるとは…なんとも感慨深いものです。
いつもとは少し作風が違うものを載せましたが、楽しんでいただけましたら幸いです。

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